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アイ・グラスに集う/ shppi ページ13

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長くて綺麗な髪が強い秋風に吹かれてさらり、と流れた。腰まである黒髪が風に舞う姿はどうしようもなく絶景でまるで絵画の様だ。襟元の蝶々結びの赤いリボンが未だに目に焼き付いている。白地に紺の水玉の折り畳み傘。そこまで鮮烈に焼き付いている。遊歩道。誰もいない帰路で二人きり。彼女はふと立ち止まって此方を振り返った。

「ショッピくん、」

降り注ぐ雨の音が消える。視線がただ彼女だけに吸い寄せられる。切り揃えられた前髪と滑らかな黒髪が時雨の中で踊って。彼女の双眸がぎゅ、と弓形に細められる。その一瞬間、一瞬間。傘から零れ落ちる雫が地面に落ちる音迄が鮮烈にこだまする程に俺は彼女に見惚れていた。彼女の形の良い唇から言葉が花弁の様にまろく零れてゆく。

「雨音が響いてますね。」

なんて女だ、と思った。これ程に辛くて哀しいことがあろうか。何も意識していなかったただの同級生がこんなにも一途に俺を想ってくれていたにも関わらず、俺は全く配慮しなかった。好きならばただ玉砕覚悟で思いの丈をぶつければ良かったのに俺はそうしなかったのだ。

「ごめんなさい。」

少し離れた間合いから彼女が解けてゆく。夏に連れ去られる揚羽蝶の様に。雨の中、するりと俺の指を抜けた蝶は雨足の中に羽ばたいて見えなくなってしまった。引き止めれば良かったのかもしれない。行かないでくれ、と。待ってくれ、と。そうしなかったのはどう考えても俺の落度に違いなかった。

「何やっとるんやろ。追いかけな。」

そう思うのに足は動かず終い。ただ茫然と立ち尽くすのが精一杯だった。遊歩道に植えられた銀杏から落ちた実が独特の芳香を放っているばかり。足下に打ち付ける雨にやっと気を取り戻した。嗚呼、追いかけなければ。そう決めた俺は緩慢に帰路を辿り始める。まずは帰宅せな、話はそれからや。

「A、待っとってな。」

歩き出した足は軽い。菫色の傘から滴り落ちる雫が一層輝いて見える。空は鈍色の雨天だが、俺の心は健やかで晴れ渡っていた。頬が緩み切って仕方がない。もし、通行人が此処にいたとしたらそれはそれは俺を気味悪がったに違いないが、俺にとっては些細な事。色香だけ味見させて後はお預けだなんて面白くない。

アイ・グラスに集う/ shppi→←猫と鞠と微風と/ ut


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鵯(ひよどり)(プロフ) - 栄養失調さん» みんな大好きやまとちゃんですが、噂(史実)によると沈没日が4月7日付近らしいのです。厳密には沖縄周辺にはでは散っておりますが、あくまで全国平均です。大和戦艦ミュージアムで桜の花をモチーフにしていたりしたのでつい。コメント誠に有難うございます。 (2019年10月14日 7時) (レス) id: 470ef09c6f (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - 鵯さんの書く作品は本当に美しいですね。言葉一つ一つが繊細で……なんか、言葉にできないような、はい。頑張ってください!!!!(やけくそ) (2019年10月14日 1時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)
栄養失調 - ちょっと待った(迫真)桜纏し大和戦艦……?さくら……さく……ら……?桜は散り際が……一番……(涙戦崩壊) (2019年10月14日 0時) (レス) id: 3967b4b60c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鵯(ひよどり) | 作者ホームページ:  
作成日時:2019年9月19日 22時

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