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「本読んでると、時間があっという間に過ぎていくんよねぇ」
「あぁ…分かります」
「ん、こっち上がり?」
「…ええんですか?」
「もちろん。また話聞かせて」
昨日は彼自身、心の整理がつかないようでほとんど話はしなかったけど、それが恋愛の悩みなんだということは分かっていた。
今日は、また更に迷い込んだ顔をしているから智洋でも呼ぼうか…
でも、この子の話を聞き届けたいと思ってる自分もおって。
「緑茶のめるか?」
「は、はいっ…」
小上がりの奥にいつも用意してある智洋のお茶セットを拝借しようと箱を開けると、中には茶葉の他にいちご大福が入っていた。
なんと。本に熱中するあまり智洋が来たことにも気づかへんとは。
しかも俺の魂胆はバレバレのようで、ちゃんとふたつ作ってくれている。
「なあ、君いちご好き言うてたやんなぁ。いちご大福食べへん?うちのに作ってもろてんよ」
「え、わぁ…っこれ、手作りなんですか?!」
「ふふ、じょーずに作るやろ」
「すっごぉ…キレーすぎて、食べるのもったいない……」
いただきます、って丁寧に言うてからはむっとひとくち。
ぱああって聞こえてきそうなその表情は照史のそれに似てておもわず笑ってしまう。
「美味しい?」
「はいっ!とっても!」
「俺も食べよっと」
彼に倣って大きくひとくち。
あぁ、彼の表情にも納得やわ。
程よい甘さと酸味に、自然と笑みが溢れる。
「えと……店長、さん?」
「おん。重岡でええよ」
「重岡さん…!あ、ぼ、僕はっ、安田です!やすだしょーた言います」
「ふふ、そぉですか。俺は重岡大毅です〜」
別に名乗らんでもええのに、律儀な子や。というか、懐こい子?
昨日はこんな隙間ないくらい思い詰めてたのになぁ、いちご大福様様、やね。
あぁうそうそ。智洋様様やよって、誰も咎めてないのにしっかり訂正を挟んでいると、控えめな声が空間を揺らした。
「昨日の、話、を…聞いてもらいに来たんです」
「おん」
「なんでか分からへんけど、重岡さんに聞いてほしい思たんです」
「そっか」
「…僕、おかしいんです」
「どんな風に?」
「恋、してもうたんです。先輩に」
昨日、順繰りもめちゃくちゃに吐き出していたそれを、今度は丁寧に、自分自身にも言い聞かせるように一つずつ紡いでいく。
「先輩ね、僕と同じ、なんです。あ…え、と……だからつまり、」
「同性なんやね」
「…はい」
震えながら紡がれた彼の気持ちに、恐怖や罪悪感をみた。
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杏子(プロフ) - ebifuraistar73さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです!また少し待たせてしまうかもしれませんが、ゆっくり更新していきますのでこれからもよろしくお願いします! (2018年3月13日 14時) (レス) id: f0bc5c27fe (このIDを非表示/違反報告)
ebifuraistar73(プロフ) - 待ってました!公開する季節、ぴったりですね。ありがとうございます。 (2018年3月13日 6時) (レス) id: 747d322e1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏子 | 作成日時:2017年9月6日 19時