大切な人の席【江戸川乱歩】

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敦side

ずっと気になっていたこと

乱歩さんの隣の席のことだ

誰の席でもないし、誰も座らない

その席は、ただじっと待ち人を待ってるみたいだった

「乱歩さん」

「んー？何？」

麩菓子を飲み込みこっちを向く乱歩さん

口に少しだけ猪口が付いている

「ここの席って誰のなんですか？」

「おい！敦！」

国木田さんが、僕の口を手で塞ぐ

も、若しかして…聞いちゃいけなかったこと？！

乱歩さんは、僕の目を見ながら考え込んでいる

暫くして目を逸らしながら

「僕の大切な人の席」

その言葉に反応した太宰さんが、目をキラキラしながら会話に入り込む

「乱歩さん、その人はどんな方なんですか？」

「うーん…放浪癖があってボサボサの髪の毛で、無表情」

いつの間にか国木田さんもこの会話に身を傾けていた

噂を聞いた、与謝野さんやナオミさんも集まってくる

「けど、信頼できて僕よりはるかに劣るけど、頭は良いよ。いっつも僕と一緒に行動してた。のんびり屋で可愛い子」

「わぁ…これは、心中に誘えないなぁ」

「誘おうとするな！その前に仕事をしろ！」

乱歩さんがこんなに想う人なんだ…どんな人なんだろ

会ってみたいなぁ

「会えるよ？多分そう遠くない日に」

麩菓子を頬張りながらそう云った

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