少女よ、咲き誇れ 【鬼滅の刃】

華がひとつ ページ8

華咲side


「ほんとに……あんたは恐ろしい子だよ」


隣で眠る不思議な娘、神羅Aを横目で見ながらはぁと深いため息が出た。

柱を辞め、この山奥に1人で住んでいた私の目の前に、この子は突然現れた。

初めは放っておこうかと思った。だけど、気づいてしまった。

この子が、"稀血"であることに。
稀血は、鬼に好まれる。鬼を呼び、普通の人よりも鬼に食われやすい。

だから、放っておけなかった。
いや、それだけじゃなかったのかもしれない。


『………い、死に、たく……な、い』


見つけた時、この子はうわ言のようにずっと死にたくないと言っていた。

生きたいという、強い思い。いや、執着と言った方がいいのか。
その姿は、昔の私と酷く似ていた。
しかも、傍には誰も触れていない日輪刀。

気づけば、見ず知らずのこの子を抱きかかえ手当をしていた。

初めて会った時から、どこか予感はしていたのかもしれない。


「だけどねぇ、こんなにも恵まれているとは」


最初は、ほんの少し鍛える程度だった。
稀血である以上、鬼には遅かれ早かれ必ず出会うだろう。

その時、逃げきれるようにこの罠だらけの山を往復させた。
でもこの子は、わずか5日でその罠全てを熟知してしまった。

まさかと思い、木刀を握らせれば2週間とちょっとで私の木刀を弾いた。

その時、確信してしまった。
この子は、きっと鬼殺隊になる。いやならなければいけない。才ある者だと。

案の定、あんたは私が教えてもいないのに何故か”あの呼吸”を使えた。

花と蟲と岩と水と火と雷。この6つの呼吸全ての派生であるのに、どれとも全く違う呼吸。

鬼殺隊の歴史上最も、特異の呼吸と言われる”生の呼吸”を使えてしまったんだから。


だからこそ、私はあの時のあんたの言葉を聞いて悲しくなったんだよ。


『私はっ！平穏に！暮らしたいだけなのに!!』


普通に生きたい。そんな些細な願いさえ、あんたは叶うこと許されない。

許しておくれ、A。
お前はこれから平穏から最も遠い所に身を置くことになる。


それでも、それしかないんだよ。

異常なまでに、生に執着するあんたとかつて生柱と呼ばれ生の呼吸を生み出した私が出会ったことは意味があるだろうから。

すやすやと眠る、まだ幼いAの白い頬を撫でる。


「お前のこれからが少しでも幸せでありますように」

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