花弁がごじゅうきゅう ページ24
◇◆
「……さん、起きてください」
優しい声が聞こえる。肩を揺すられる感覚とその心地よい声に、瞼をあげるのが億劫になった。ｰｰこのまま一生寝ていたい。任務に行きたくない。
「起きるんだ!!A!!」
『はいぃ!!』
もう少し寝ていよう、と心の中で決めた途端鼓膜が割れるんじゃないかという大声で叫ばれた。
慌てて起き上がると、大声の犯人であろう杏寿郎さんと
「おはようございます、Aさん」
しのぶさんが顔を覗き込んでいた。状況についていけない私を他所に、しのぶさんはスっと視線を逸らした。
「彼も起きたみたいですね」
『彼って……炭治郎！』
しのぶさんの視線を辿れば少し離れたところに炭治郎がいた。炭治郎は手足を縛られ、砂利の上に転がされている。
煉獄さんが目の前にいる為、炭治郎からは私の姿が見えていないようだ。
「ここは鬼殺隊の本部です。あなたは今から裁判を受けるのですよ、竈門炭治郎君」
しのぶさんの言葉に真逆と思い、周りを見れば不死川さんと伊黒さん以外の柱が全員揃っていた。完全な、私に対する神様への虐めである。
「貧血と胡蝶から聞いた！大丈夫か？」
『柱の威圧感で押しつぶされそうなことを除けば、何とか……』
傍にいた杏寿郎さんは、私の言葉にAは本当に面白いな！と豪快に笑った。
その笑顔に、杏寿郎さんだけが救いだと思った瞬間、斬首なんて恐ろしい言葉が飛び出てきた。ｰｰき、杏寿郎さんが言うと笑えない……！
追い打ちをかけるように、杏寿郎さんの隣にいた天元さんまでもが血飛沫なんて言葉を出してきた。
「殺してやろう」
「うむ」
悲鳴嶼さんの言葉に2人が頷く。この場面では炭治郎は鬼を連れた違反者としか認識されていない。
何とかしたいがこの緊迫した状況、更に柱が揃ってる中で声を張り上げる勇気なんて私に無い。あったら、鬼みて泣いていない。
「そんなことより冨岡とそこの女はどうするのかね」
グルグル考えていると上から声が降ってきた。顔をあげれば、見当たらなかった伊黒さんが蛇と共に木の上にいた。蛇のような鋭い目と、視線が交わる。
「胡蝶めの話によると隊律違反はそこの2人も同じだろう」
『あははー、やっぱり？』
(拘束されてないから、見逃してくれたかなって期待してたよ!!)
半泣きになった私を見て、愉快そうに伊黒さんが少し笑ったのは被害妄想じゃない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2877人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「鬼滅の刃」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美穂(プロフ) - 凄く続きが気になります (2022年12月1日 22時) (
レス) id: c0f42fdb83 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 面白かったです！！ (2021年10月10日 16時) (レス) @page32 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして！お話面白かったです！更新しないのですか？続きが気になります！ (2020年9月8日 23時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
床に落ちてるゴミ - あれ？更新しないのですか？とても面白かったので続きが読みたいです！ (2020年9月7日 18時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
日和 - 凄く面白かったです！ヽ(*´∀｀)ノ続きが気になります！ゆっくりでいいので更新待ってます！ (2020年9月4日 15時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちょこもち | 作成日時：2019年6月27日 23時
