ねぇ、こっち向いてよ (ページ12)

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ロビーで待っていると、小走りでこちらに駆け寄ってくる

『帰ってくださいって言ったじゃないですか…』

「たまたま同じ時間だったんで」

『そうじゃなくて、』

この時間はもう受付の人もいなくて、このロビーには僕たち２人だけ

外に出ようとした時、振り向くと何故か立ち止まっていた

『あ！忘れ物してしまいました！』

「取りに行きます？」

『違うそうじゃなくて……』

この人が何を言いたいのか全然理解出来ない俺の気持ちを察したかのようにパッと顔を上げて

『一緒に帰ってもしものことがあったらダメなので』

ハッキリとそう言った

もしものことって………

あ、そういうこと？

こういうのって大体、撮られる立場にある僕らが気にしないといけないことなのに

そんなところまで考えてくれるんだ、この人

『なので、先に帰っ…』

「タクシーにしましょ？」

『いやでも、』

「タクシーなら大丈夫ですよ」

『……折れてくれないんですか？』

「暗くて危ないんで」

この業界で生きている以上、そういう写真が撮られてしまうと仕事にも影響があるわけで、常にある程度警戒をしていなければならない

それに、売名のためにわざと撮られようとする人も居たり……何かと気を付けないといけない

でも、この人ならって思えた

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