居酒屋で会った婚約者【五条悟】

惚れた弱み ページ49

僕は今、神社近くの人気のない公園でポツンと椿さんと2人でベンチに座っている。

事の経緯を話すと、あの後Aさんもとい百々目鬼が意識を引っ込めた時から既に5時間は経過していた。

七海は、百々目鬼について動いている事が上に知られないようにと任務に行ってしまった。

彼女は規則正しく呼吸はしているが、顔は青白い。時折唸る時もある。

彼女が眠る間、掛けたい言葉を沢山思い浮かべるが其れを伝える勇気はない。

大丈夫だった？とか、無理しないでとか、当たり障りの無い事しか言う勇気が無い。


｢はぁ〜｣


溜息を着き、目元に手を当てながら少し体制を崩す。
僕ってこんなに臆病だっけ？と自問自答する。

高専時代から女に関して困った事は1度もなかったし、遊ぶ関係でもサバサバとした関係ばかり好んで、肉体関係を持った事は1度もなかった。

こんなに他の誰かに触られたくないと思ったこともないし、僕だけを見て欲しいなんて事も思ったことがない。

｢其れが惚れた弱みか？｣

領域内で言われた百々目鬼の言葉に少し反抗心が芽生える。

別に惚れたとかじゃないし。ちょっと危なっかしい人だから目で追っちゃうだけだし。

そう思いながら頭を振り、眠る彼女の顔を見ようとした時だ。


｢……おはようAさん｣


｢……おはよう五条君。って言うかもうこんにちはじゃない？この時間って｣

薄目を開け、微笑んだ彼女と目が合った。

守らせて→←整理

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す