二十頁〜狂い始めた歯車1〜 ページ26
「あ、雪城くんおはよう」
今日室にはいると、扉(とびら)付近でおしゃべりしていた女子達が、視線をこちらに向ける。
「おは――」
しかし彼女たちに答える声は、突然の大きな笑い声により遮(さえぎ)られた。
「ぶはっ! マジかよ南条」
「ヒーローってお前いくつだよ。ヒィー、腹いてぇー」
今日も変わらず南条の周りは、ゲラゲラと品の無い笑い声を響かせてていた。
「良いだろヒーロー。カッケェじゃん!」
「はいはい。ほんと南条はお子ちゃまですね〜」
「くふふっ。ヒーローって、けほっ、ひーろー……ひははは!」
「お前が言うと冗談か本気かもわかんねーわ」
第二の性別一色だった話題はいつのまにか薄(うす)れ、学校全体の雰囲気(ふんいき)は元の形へと収束する。
いやいやいや! それにしても、だ。
ヒーロー……?
さっきっからあそこは何の話をしているんだ?
「バカにすんなよ。俺はヒーローになる!!!」
「某(ぼう)麦わら船長みたいに言ったって、かっこよくねえから」
あ、うん。
無視していいやつだ。
きっと下らない話しに違いない。
絡(から)まれる前にあらかじめ廊下(ろうか)にでも逃げておこう。
俺はバックだけを机におき、教室を出た。
全ての部活動は今日からテスト期間にはいったため休止となっている。
そのせいか、チャイムがなる三十分も前だと言うのに校内は賑(にぎ)やかだ。
様々なクラス、学年が入り交じる廊下(ろうか)を俺は意味もなく通りぬける。
耳にはいる話題は大方テストの事。
中にはテスト期間を利用して遊びに行こうなんて話しもあった。
しかし、それはちょうど階段の横を通ったときだ。
俺のいる場所からは視覚となっていて姿は見えないが、おそらく階段の踊(おど)り場。
そこから声が聞こえてきた。
「おいおい。β風情がα様に逆らっていいと思ってんのか?」
「あ、いや……」
絡(から)まれている方は分からないが、偉そうな口調で凄(すご)むその声には聞き覚えがあった。
隣のクラスの剛堂(ごうどう)だ。
高圧的な態度と暴力で人を脅し、支配する。
関わればろくなことが起きない、要注意人物。
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作者名:フロース | 作成日時:2019年3月4日 19時