十六頁〜これは果たして恋なのか9〜 ページ21
帰り道は相変わらず平助と共にしていた。
正直、今日ばかりは一人で帰りたかった。
しかし同じ部活動に所属し、且(か)つ方向まで同じとなると一緒に帰らない方が不自然である。
断る理由でもあればいいのだが、あいにく思い浮かばない。
「なあ、A。もしかして体調悪い?」
「別にそんなことない」
体調は悪くない。
だけどお前のせいで調子は悪いよ、なんてとてもじゃなく口にはできない。
「でも、部活中もどこか上の空ってか、全然集中してなかったし」
「気のせいだ、よ……っ!」
平助に腕を強く引かれ引き寄せられる。
かと思えば、訳のわからぬままもう片方の手で乱雑にデコへとあてられた。
思いのほか平助の顔が近くにあるものだから、内心、心臓バクバクだ。
「なに!?」
平助は俺を引き寄せた手を一度離し、今度はその手を自分のデコへとあてる。
「熱はないみたいだな」
「はあ?」
心底安心したように、眉(まゆ)を下げほっこりと笑っていた。
ほんと、そういうところなんだよ。
「Aって元々人と関わるの苦手だもんな。最近のバカ騒(さわ)ぎでの疲(つか)れでも出たか?」
「……そう、かも」
確かに、平助のように誰とでも仲良くなれるタイプではないし、気の置けない仲と言ったら片手で数えられるだけだ。
話しかけられるのは苦手だし、一人でいる時間が好き。
だけれどボッチは寂(さみ)しいというめんどくさいタイプ。
第二の性別結果が届けられてからというもの、何年何組の誰さんかも分からない人たちか、らやたらめったら絡まれた。
正直うんざりしていたのは確か。
でも、一番の原因ではない。
とりあえず平助の言葉に乗ったが、きっと彼はそれすらも分かっている。
わかっていて聞かない。
俺が話したくない事に気づいたから。
平助は俺の逃げ道を作ったに過ぎない。
本当に、そういうところなんだよ。
俺が、彼に惹(ひ)かれるのは。
これは果たして恋なのか。
はたまた友愛、尊敬、憧(あこが)れ?
俺はますます分からなくなった。
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作者名:フロース | 作成日時:2019年3月4日 19時