××頁〜ウンメイノカクテイ1〜 ページ11
――それは、もう一つの物語り。
「嘘(うそ)だろ、おい……」
その手には一枚の紙。
『【間中 平助】様
あなたは検査の結果、――』
***
俺は今日、親友に嘘(うそ)をついた。
俺の父親は、何処(どこ)にでもいる普通のサラリーマン。
母親も日中はパートに行く普通の主婦。
どちらも第二の性別はβ。
普通の家族。ありふれた家庭。
俺はその、平凡な家庭に生まれた平凡な子供。
「いや、だってAんとこの親ってどっちもαだろ」
そりゃ、誰もが思う。
「絶対αだって思うじゃん」
絶対にβだって。なのに――。
頭を過(よぎ)るのは、昨日届けられた検査結果の通知。
確認するまでもなく分かってるよ。と、軽い気持ちで開けた封筒(ふうとう)の中身には、思いもしない結果が書かれていた。
『【間中 平助】様
あなたは検査の結果、
第二の性別が【α】であると判定されました。』
自分の目を疑(うたが)った。
何度も何度も同じ文章を読み返した。しかし何度読んでも、何度疑(うたが)っても変わらない。
淡々(たんたん)とした言葉で、事実のみが述べられていた。
ありえない。俺がαだなんて、絶対にありえない。なんの冗談(じょうだん)だ。
『みんなの言うとおり俺はβだ! 』
昼休み、Aのクラスの教室で嘘(うそ)をついたのは突発(とっぱつ)的な衝動(しょうどう)。
俺は恐れた。
今後付きまとうαというレッテルを。
平凡(へいぼん)のくせにα。絶対にそう思われる。
考えるだけで恐ろしかった。
αであることに喜べないどころか、その結果に恐れるなんて。
やっぱり俺はαらしくない。
『間中はどっからどう見てもβだろ!』
俺の言葉に皆(みな)が肯定(こうてい)する。
なあ、やっぱりって思っただろ?
それ以外ありえないだろ?
Aだって、そう思っただろ?
なあ。
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作者名:フロース | 作成日時:2019年3月4日 19時