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第28話:茶髪の少年 ページ30

呪文を唱えていないはずなのに何故か現れた水球。それはまっすぐレオンへ向かっていた。彼自身も自分の身に何が起こっているか理解できていないのか、巨大な水の塊をみて呆然と立ち尽くしている。

このままだとレオンが危ないと誰もが心配した時、何者かがさっと現れて彼の手を引いた。重心がぶれたレオンは身体を支えることが出来ずに、そのまま手を引いた者へ体重を預けるように倒れこむ。目標を失った水球は急速に速度を落とし、しばらく付近を漂った後パシャリと音を立てて地に落ちる。


「ふぅ……怪我なくてよかった。それにしても2人の魔法、凄かったね!」


レオンの手を引いたのは短い茶色の髪の毛に、碧玉の瞳を持つ少年だった。彼は未だに惚けているレオンを引き起こし無事を確認した後、レオンと私とを交互に見て笑った。

そして状況を飲み込めないでいる私の顔を見つめたあと、何かに気がついたようにポンと手を打った。


「もしかしてボクのこと分からない?
ボクはキース。一応、オリヴィアちゃんと同じ班のメンバーなんだけど……。」

「……ごめん、レオンに気を取られてて覚えてなかった。」

「ううん、気にしないで! なんかほんと君って面白いなぁ……」


茶髮の少年、キースは困ったように頭を掻いた。改めて考えてみれば、そんな名前を聞いた気がする。同じ班のメンバーを忘れていたことが申し訳なくなって彼に謝った。すると彼は花が咲いた様に笑い、首を横に振る。柔らかい笑い方や言葉遣いから、悪い人では無さそうだ。急に割って入ったのは怪我をして欲しくなかっただけみたいだし。何はともあれレオンを怪我させて後味の悪い終わり方をせずに済んでよかった。

改めてキースに礼を言おうと口を開きかけた瞬間、クリス先生が慌てて箒に乗って飛んできた。少し遅れて息を乱した一人のクラスメイトが走ってきたので、その子が先生を呼んだのだろう。


「あなたたちなんてことを! お友達に魔法を放つなんて、下手したら怪我どころじゃないのよ!」


クリス先生は、私とクリスに怪我がないのを確認した後、雷のような勢いと声で私らを叱った。

レオンは悔しげに顔を歪め、先生とは目を合わせようとしない。私もあの行為に対しては悪いとは思うが先に仕掛けてきたのはレオンだ。しかもこの件に関しては先生にも非がある。


「だって、そうならないように見守るのが先生の役目でしょ。」


そう言ったら先生は決まりの悪そうな顔をして目を伏せた。

第29話:クラス内の派閥→←第27話:小さな背中



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えるふぃ(プロフ) - ゆいな♪さん» ゆいな♪さん、ストーリーをお褒め頂きありがとうございます(*´ω`*) 描写頑張った甲斐があります!これからもっともっと引き込んで行けるように頑張りますね!応援ありがとうございます! (2019年8月24日 23時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな♪(プロフ) - あわわ、す、すごいです!ストーリも分かりやすいので、凄い引き込まれます!更新頑張ってください! (2019年8月16日 13時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - ぽむぽむぽあろさん» ぽむぽむぽあろさん、ありがとうございます!そんな風に褒めてくださって嬉しいです!読み手に情景が伝わるように書くのが目標だったので(*´ω`*) 夏休みに入ったら更新速度上げられるように頑張ります!応援ありがとうございます! (2019年7月30日 22時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむぽむぽあろ(プロフ) - 設定がしっかりしてるので、お話の内容がアニメーションになって頭の中に浮かびます。とても面白くて好きです。もっと伸びてておかしくないと思うので更新頑張ってください! (2019年7月30日 12時) (レス) id: b97deb3170 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - ちょこころねさん» ちょこころねさん、はじめまして!世界観とキャラの設定は一番力を入れたところなので、そこを褒められるとめっちゃ嬉しいです!文章長いのに一気読み、おつかれさまです!ちょこちょこ更新するのでよろしくお願いします! (2019年1月18日 10時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えるふぃ | 作成日時:2018年9月23日 21時

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