短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】3 (ページ29)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:12,096 hit

【ヒロ風】ページ29

今日はいつも以上に気温が低い気がする。
少しでも暖を、とポッケに手を入れるが、それでも寒さには叶わなくて、思わず身体を震わせた。

白い息を吐きながら、少し前を歩く赤髪を目で追うと、彼も同様に、寒そうに身体を震わせていた。

「ヒロト」

そう声を掛けると、彼は足を止めて、こちらを振り向く。奇妙なほど白い彼の顔は、寒さのせいなのか、ほんのりと赤みを帯びていているような気がする。

「どうしたの、風丸くん」

「なあ、寒くないか？」

「うん、寒いね」

それがどうしたの、とでも言いたげに首を傾げる彼。

彼に一途な想いを馳せているが、それを伝えることはまだ出来ていなくて。
本当は少し前を歩く彼の隣を、歩きたいと思う。あわよくば、寒いから、と寒さを言い訳にして手を繋いでみたい、なんて。

「…やっぱ何もない」

乙女みたいな思考に、ひとり首を振る。

普通に考えて、男ふたりが手を繋いでいるだけでもおかしな光景だ。そう思えばやっぱり勇気は出なくて。

「そう言われると気になっちゃうなあ」

「わ、忘れてくれっ！」

くすくすと口元に手を当てて笑いながら、目の前の彼は少し考える仕草を見せる。

「…寒いし、手でも繋ぐ？」

「な、なんでそれを…ｯ！」

「あ、当たっちゃった？」

目を細めて微笑む彼に、心をときめかせ、更に自分の思考を読まれたことが恥ずかしくなってきて、頬に熱が集まってくることが分かる。

「ふふ、俺はいいよ、風丸くんと手を繋いでも」

そう言って手を差し出してくる彼。

なんだか、その余裕そうな表情が、少しだけ苛立ちを覚えさせる。だけど、嬉しいと思う自分もいて。

「暖をとるためだからな…ッ！」

そう言って、ポッケから手を出して、差し出された手に自分の手を重ねて。

「うん、分かってるよ。…ふふ、温かいね」

「…ああ、」

彼の手の温もりを確かめるように、強く握りしめて。

まだ気持ちを伝えることは出来ていないけれど、いつか自分の気持ちを伝えることが出来ればいいな、なんて。

そんなことを考えながら、合宿場までの道のりをふたりでゆっくりと歩いた。

-----------------

最近無印のFFI編を見返してます～！
あの頃はハマらなかったであろうカプに落ちまくっていて大変です、でも楽しい。