短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】3 (ページ27)

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【天シュウ 3】ページ27

「君とね、別れる前に伝えたかったんだけど、伝えたら…いよいよ成仏できそうな気がしたんだ」

妹のことを忘れたことは無いけれど、それ以上に幸せなものを与えてくれたから、なんて腕の中で震える君は言葉を続ける。

「僕ってさ、狡いから…君と付き合えて幸せで、別れるのが嫌で…ずっと君に思って貰っていたくて…ッ、だから……ずっと君の一番でいるには成仏しちゃだめだって、思っちゃって…ッ」

いよいよ泣き出してしまった君の頭を優しく撫でて、そんなことないよ、なんて告げる。

「シュウ、大丈夫だよ、俺はシュウが例え成仏しちゃっても…君がこの世から消えちゃったとしても、俺の中の一番はずっと、ずっとシュウしかいないから」

「でも…ッ！君は本当は、もっと、素敵な恋をするべきなのに…、僕がずっと足枷になるなんて、嫌だよ、」

「大丈夫、シュウは足枷なんかじゃないよ？シュウは俺の、初めて出来たずっと大切で、大好きな恋人だから…」

「てん…ま、」

本当はいなくなんてなって欲しくない。けれど、この世にこのまま未練を残していて欲しくない。

そんな矛盾した考えを持ちながら優しく彼の瞳を見つめ、そして、その赤く熟れた唇にそっと口付けを落とす。

「シュウがもし、いなくなっちゃっても、俺はずっと、ずっと好きだからさ、だから、もう苦しまなくても大丈夫だよ…」

そう伝えると、だんだんと彼が、消えるかのように薄くなっていく。

「てんま、ぼく、きみのおかげで、じょうぶつ、できそうだ…ね、てんま、」

ずっとずっと、だいすきだよ、なんて伝えられて再びキスをすると、途端パッと目の前が明るくなって、そうして君はその場からいなくなった。

夢のような体験をした。

ずっと大好きな君がいなくなる、そんな儚い夢。

だけど、それは夢じゃないんだ、なんてその場で1人蹲って声を上げて泣いた。

「俺も、俺もずっと、ずっとシュウのことが大好きだよ…ッ」

そう誰もいなくなった島に伝えると途端にふわっと風が吹いて、それはまるで彼がありがとうと伝えているように優しくて暖かかった。