短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】3 (ページ26)

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【天シュウ 2】ページ26

君はどうなんだろうか？今も尚そこに一人でいるのだろうか？

フィフスセクターが無くなった今、あの島に訪れる者は誰もいないようで、すっかりと忘れられた島になってしまった。

もしかしたら、もう君はそこにいないかもしれない。

ちょうど島に着いた船は俺と船頭さんだけを乗せた自家用機だ。数日後にまた連絡をするからその時は迎えに来て欲しい、という旨を伝えると船頭さんは分かった、とだけ伝えそのままみんなが住む街に戻ってしまった。

「全然変わってないな、」

島についてから辺りを見回してみたけれど緑の生い茂るその島は何一つ変化した様子を見せなかった。

そのままゆっくりとその島を歩き出す。

そして、かつてシュウが話してくれたサッカーの守り神だという石像の前を通りかかった時、あの頃と背丈も見た目も何一つ変わらない、彼の姿が見えたような気がした。

どうして？君も俺と共に成長しているはずなのに。なんで変わっていないの？もしかして俺は幻想を見ているの？

なんてふとそんなことが頭に頭をよぎるが「シュウ？」とその幻に声をかける。

すると、君は驚いたようにこちらを振り返り、あの頃と何も変わっていない可愛くて、愛おしい笑顔を見せる。

「天馬…！」

そう言いながら駆け寄ってくる姿は幻とも思えなくて、少し戸惑ってしまう。

「久しぶりだね、シュウ」

何も無かったようにほほ笑みかけると君は少し困ったように笑いながら「大きくなったんだね」なんて呑気に言っている。

「うん、もう24歳だよ」

そう伝えると彼はそっか、もう大人になったんだね、としみじみと呟く。

「あのさ、シュウ。君は？君はどうしてあの頃と姿が変わっていないの？」

「えっと、」

困ったような表情のまま、気まづいのだろうか目が泳いでいる。

「あのね、天馬。驚かないでほしいんだけど、僕ね、本当は死んでるんだ」

「えっ…とそれはいつ…？」

「君と出会う、もっともっと前の頃だよ。僕ね、大切な妹を失って、それでこの世に未練が残っちゃったみたいなんだ。だから、成仏できないままこの世にいるの」

そう告げるシュウの表情は今にも泣きそうで、なんだか自分まで苦しくなって思わず力いっぱいに抱き締めた。

触れた彼の身体は透けることなく、きちんと抱き締められた。だけど、温もりは感じられなかった。

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