短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】3 (ページ24)

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【シュウ天】ページ24

チームゼロと雷門の戦いを終えてみんなが島を出るという。

もちろん天馬もこの島を出るという訳で。

「ああ天馬、僕だけの天馬、僕はもう二度と大切な人を失いたくないんだ」

1人きりの夜空の広がるグラウンドでそう呟く。

過去に大切な妹を亡くした寂しいお兄ちゃんは昔と同じように大切な人を失いたくないんだ。

昔はバレてしまったけれど今度こそはバレないようにと一人計画を練った。

そして気づく。君もずっと僕と一緒にこの島に残ればいいのだと。

「ねえ天馬」

この島を出る一日前の夜。

最後に二人きりで話したいと僕から声を掛けた。

天馬は優しいから、二つ返事でそれを了承してくれた。

「どうしたの、シュウ？」

「前にさ、僕が話した話覚えてる？」

「えっと…？」

「生贄になった妹を助けるために戦ったお兄ちゃんの話さ」

「あ、うんっ覚えているよ！それがどうかしたの？」

「…あれね、僕なんだ」

そう言うと彼は驚いたように目を見開きそして困ったように首を傾げた。

まあ、確かにこんなこと突然言われても困るよね。

「だから、僕ね、本当は幽霊なの」

念押しにそう伝えると天馬の表情は唖然としていてどうしていいか分からないようだった。

「だからさ、明日みんな行っちゃうでしょ？でも僕はこの島から出ることが出来ないんだ」

「シュウ…」

「それでね、僕はもう二度と大切な人を失いたくないんだ」

そう言いながら彼を抱き寄せると困ったような声を上げる。

「僕もうあんな思いをしたくない」

抱き締める力を少しだけ強めると少し思いが伝わったのか、うん、と返事をしてくれた。

「だからね、天馬」

「どうしたの？」

「僕と一緒にこの島に留まってくれるよね？」

「えっ、」

「僕とさ、二人でずっと一緒にいよう？それでね、いっぱいサッカーをして動物たちとも戯れて幸せな日々を過ごそう？」

「ちょ…ちょっと待ってシュウ？俺、確かにシュウと離れるの寂しいけどこの島に留まろうとは思ってないよ？」

あーあ、君もそんな寂しいこと言っちゃうんだ。

君は君だけは僕と一緒にいてくれると信じていたのに。

そう思いながらそっと彼の首に手を回す。

「シュ、シュウやめ…っ！？」

「君もさ、僕と一緒に死んじゃおう？そうすればずっとずっと二人で一緒さ、」

あはは、と笑いながら僕は手に力を込めた。