短編集【ｲﾅｲﾚ・ｲﾅｺﾞ】3 (ページ22)

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【速浜】ページ22

「速水ー、今どこ？」

耳元で聞こえる少し低くなった懐かしい君の声。

「改札口の＿＿」

「あっ見っけ！」

嬉しそうに手をぶんぶんと振ってこちらに駆け寄ってくる姿は十年前とは全く変わらずにいた。

「速水、久しぶりー！」

「久しぶりですね、浜野くん」

中学生以来全く会っていなかった彼は少し大人びていた。だけどあの頃と変わらない少し幼さが残っていた。

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「それにしても懐かしいね」

「そうですねぇ」

家の都合で高校生になると同時に転校したためこの稲妻町に帰ってくるのは十年ぶりであった。

あの頃は浜野くんと離れ離れになるのが辛くてなかなか転校するという話を持ちかけることが出来なかった。

結局彼にその事を伝えたのは転校する一週間前になった。まあ噂とかで薄々は感づいていたみたいだったけど。

「元気だった？」

「まあそこそこには元気でしたよ。浜野くんは元気でしたか？」

「俺も元気だったよ！」

太陽のように眩しい笑顔で微笑む姿に十年前と同じような胸がきゅっと締め付けられたような気がした。

＿＿＿ああ、俺は今でも。

「あ、そういえば倉間の身長がすっごい伸びたの！」

「えっ倉間君がですか？」

「そうそう！そうだなー…」

そういいながら俺と向き合う形になって手をぐっと伸ばした。

「こんくらいかな」

彼が示す今の倉間くんの身長は俺よりも少し高かった。

倉間くん中学生時代身長のこと気にして毎日牛乳飲んでたから伸びてよかったと思う。

「ちゅーか速水も伸びたね」

中学の頃はこんくらいだったかな、と俺の肩あたりにそっと手を当てた。

「は…浜野くんは…あんまり変わっていませんね」

彼に触れられた部分が熱を持ったかのように熱い。

「ば…馬鹿にしないでよー気にしてんだから」

むっと口を尖らせて拗ねた彼を見て慌ててごめんなさい、と言いながらそっと頭を撫でた。

するとみるみるうちに頬を真っ赤に染まらせる浜野くん。

「わっ…ご、ごめんなさい」

ぱっと手を離すと心なしかどこか寂しそうな様子を見せた。

「は…浜野くん？」

「あのさ…！」

「な…なんでしょう？」

心臓が激しくバクバクと騒音を撒き散らす。

恥ずかしそうに俯く彼はまるで＿＿＿。

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