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Aside
頸動脈が、触れるようになって
30分が経とうとしている。
「もう、時間が………。」
藍「早く車から出して、遮断しないと腸管が壊死し始める。もう、30分ももたない……。」
藍沢先生が、少し考えて言った。
藍「腹部を切って、鉄筋を外そう。腹壁から、腹腔内まで、切開して、鉄筋から外す。」
やろう、そう思った。
「どれくらい勝算ありますか。」
藍「全く分からない。なにせ、経験がない。」
私は頷いて、息子さんの所に行った。
「杉原さん、今からお父さんの腹部を切り開いて、鉄筋から体を外します。」
杉「え?」
「ですが、私達にも経験がないやり方です。リスクもあり、ご家族の同意が必要です。お父さんに関すること、何でもいいので教えてください。」
杉「俺、11歳の時に自分で児童相談所に電話したんです。」
私達は、驚いた。
いろんな患者さんがいて、問題を抱えているけど、こんな人は初めてかもしれない。
杉「はだしで家を飛び出して、道で人に電話を借りて。『父に殺されるかもしれないから、助けてください』って。
あの時の気持ちは、今でも忘れられません。
なので、最近もあってなかったし、それ以来父と会っていませんでした。今、飲んでいる薬どころか、どういう生活をしているのか、も分かりません。
だから、分かりません。すみません。」
私達は、言葉も出なかった。
杉「それに、父に一人で死ねよって10年ぶりにあった父にそう言ったんです。本当に伝えたかったことは、そんなことじゃないのに。」
藍「よく逃げた。」
杉「え?」
いつも、藍沢先生の言葉には、はっとさせられる。
藍「11歳だ。家を出れば、自分以外に頼れる人がいなくなることは予想出来ただろう。不安も、あったはずだ。
親は、子供を選べない。駄目な親だった場合、子供は逃げることしかない。君はとても、勇敢だったと思う。」
私は、涙を流す。
普段はクールなのに、こういう時にいつも、
人の心を打つ。
杉「やってください!助けてください!」
藍「君が本当に伝えたかったこと、を伝えられるように、全力を尽くす。」
私は、頷いて処置を始めた。
『1・2・3!』
杉「父さん……………!」
杉原さんの言葉も
藍沢先生の言葉も
私の心にずっと残るだろう
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まっちゃん(プロフ) - shizunoさん» ご感想ありがとうございます!とても、嬉しいです!!できるだけ、休日で更新頑張りますので、4章を楽しみにしていただけたら嬉しいです! (2018年9月16日 22時) (レス) id: 0cbfc4c6bb (このIDを非表示/違反報告)
shizuno(プロフ) - この作品大好きです!4楽しみにしてます! (2018年9月16日 22時) (レス) id: 21f7dd5f90 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃん(プロフ) - みくさん» 忘れていました!すみません。 (2018年9月9日 12時) (レス) id: 0cbfc4c6bb (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃん(プロフ) - ´・ω・さん» すみません!忘れてました! (2018年9月9日 12時) (レス) id: 0cbfc4c6bb (このIDを非表示/違反報告)
みく(プロフ) - オリフラ外さなくていいんですか? (2018年9月9日 12時) (レス) id: 5382e69d92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっちゃん | 作成日時:2018年9月8日 22時