オルタナな彼女

sing 1 ページ9

今日は作曲じゃなくて練習。
新曲のフリを叩き込みながら、歌いながら踊れるように体力もつけないといけない。


頭に酸素が回らねえから、何も考えなくていい。

前はそれがしんどかったけど、今はそれが救いなのかも。


「なんか、はぁ、今日のユンギ調子いいね！」

ってホソクが褒めてくれたけど
正直それを嬉しいと思えなくて


「…」


…ああ゛〜、も〜ぉおお
あいつがくっそ気になるぅう゛…


というかさっきから考えないようにしてるのに、あのAというやつが昨日からずっと頭の隅にいる。


もしかしたらまたあの部屋の前で待ってるかもしれない。


ほっときゃいいのに、何でだ。
いやでも俺が来るまでずっと待ってたら？


事務所が閉まっても、電気消されても、


ずっと…








…



「はぁあああ゛ぁ…」

「えっ、ど、どうしたのユンギ？」

「チョット、トイレ二イッテキマス」

「あ、うん。イッテラッシャイ？」





もうどうしたらいいんだ。

教えたくねぇのに

教えないって言っても諦めないあいつが悪い。



エレベーターから降りると、






…あれ？




「…いない」



昨日あいつがいたところには、ホコリしかなかった。






…えー…

まぁ、昨日結構な事言ったけど…

え？マジで諦めちゃった？

教えてって言いに来ねぇの？





……えー…。






「おかえりユンギ！…ってあれ？どうしたの
漏らしたみたいな顔してるよ」

「どんな顔だよ漏らしてねぇよ。別に、なんか…
癪に障るだけ」

「そういえばテヒョンも帰ってきてないんだけど…」




ガチャ


「あ、帰ってきた。もー遅いよテヒョン、さっさと練習再開しよ」


ってホソクがテヒョンに近づくけど
テヒョンは下を向いていて、なんかおかしかった。


「おい、テヒョン。大丈じょ…」

「やぁっばぁああぁあいっ！！！！！」



き〜ん…

う、うるせぇ



「落ち着けテヒョン。何があったんだ」

「聞いて！ヒョン！俺さっきレコ室通ったんだけど、すごいもん聞いちゃった！！」

「なになに？なんか見たの？」

って他の奴らも集まってきて(多分、練習飽きたんだと思う)


「さっきそこでレコーディングの練習してて！！俺覗いてみたんだけど！！」



ぶんぶんぶんって腕振って
ふんふん鼻息を鳴らすテヒョンを見て、よっぽどすごいものを見たらしい。


「ボーカルの歌すごすぎて！！まじで鳥肌たっちゃった！！」

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