オルタナな彼女

舎弟、誕生 ページ12

俺が作った歌がまったく別物に聞こえた。

やばい。


率直な感想、
普通にタイプすぎる






…声が、だけど。



「…シュガさん？大丈夫ですか？」

声を出せずに下を向く俺を、のぞき込む目。


「…、」

あぁ、やべえよ…
絶対今、顔赤いわ。


「…いいん、じゃねーの」

「！ほんとですか！」


絞り出した声は蚊の鳴き声程度しか出なくて、

それなのにそれを拾ったあいつは目を輝かせる。

う゛

眩しい…

そんな嬉しそうにするな。
なんで眩しく見えるんだ？

ばくばくばくって心臓が嫌な音を立ててる。



「私、今までいろんな曲を聞いてきました。だけどシュガさんがいいんです。シュガさんの曲が好きなんです。シュガさんの曲が一番かっこいんです！」

「お、おう。もう分かったから…」

「あの、この前作ってた、だーだーだー！！みたいなやつがめっちゃ好きでっ！！」

「も、いいって」

「どうしてあんなの思いつくんですか？全部コンセプトも歌詞も、感情も違ってて、でもそれ全部に共感できて、それが全部頭に詰まってるシュガさんって本当に…！！」

「〜っ！！もういい！もう分かった！！分かったから！！」


「…すごいと、思ったんです」



ああああああもう！！！

その褒めまくるのやめてくれ！！
まじ顔見れないから！！ほんと無自覚怖えーんだけど！？


「…はぃ」

ぐっ、
なんで罪悪感を感じなきゃいけねぇんだ。


だけどこいつの歌を聴いて明らかに俺の何かが変わった。



いや、心のどこかでこうなる気がしてたんじゃないか…？





「…分かったよ。」

「え？」



「教えてやるってこと」


決してこいつには見込みがあるとかじゃない。
そんなのまだ分かんねぇし、才能は無いかもしれない。



だけど、俺はもっと聞きたい。


こいつの詞で歌われた歌が聞きたい。




ぱちくりと目を開くこいつ。
初めて驚く顔を見た気がする。

そして震えた声で

「…ほ、ほんとですか？」

誰が嘘つくか
なんだか恥ずかしくてつい、


「この前言ったこと忘れんなよ？俺が買って来いって言ったもん買ってくるし、肩揉めって言ったらプロ級に揉め」

と適当に言ったら

「はい！」

びしっと敬礼しやがって…
こいつ、尻尾ついてたら絶対ぶんぶん降ってるわ。


くそ、かわ……ん゛んっ！！！





「きょ、今日からお前は俺のパシ…いや、舎弟だ」

「ありがとうございます！シュガさ…いや、師匠？」

「そこはシュガさんでいい。」

「はい！シュガさん！」

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