先輩と後輩。after story.2

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「北山になんか言われた？」



「···え？なにも！！」



「ふは、そう」





“俺には何か言われてるようにしか
見えなかったんだけどなぁー”って。



ちらっと私を見て
またくすくす笑い出すから
本当に何も言われてないです！って
二度目の念押しをすると
今度は声を上げてまた笑い出す。







「素直なところが
Aの可愛いところだよね」







ふわりと微笑むと
何かも自然に聞こえちゃうから、
この状況ですら普通に流してしまいそうになる。

よく考えたら、普通じゃないんだけど。





「てか、さっき会社で玉森見たけど
俺と帰ってることは知ってるの？」



「・・それが、北山さん
伝えてなかったみたいで、」



「あー、じゃあ
家に帰ったら修羅場な感じ？」






それめっちゃ面白いじゃん、って
ケラケラ笑い出すから
ちょっと待ってくださいよ！って肩を叩く。


ふわっと香るのは
裕太とはまた違う匂いだけど、
少し人恋しくなるのは一緒。









「Aってさ、
玉森のどこに惚れたの？」




聞き覚えのあるセリフに
一瞬固まるも、太輔を見たら
ん？って真顔で返してくるから、







「・・・それ、さっき
北山さんにも言われました」



「え？そうなの？」



「おふたりとも本当に仲がいいですね」



「えっ、それだけはやめて？」






“それは俺に失礼だぞー！！”
ってどこからか北山さんの叫び声が
聞こえた気がして、

本当は仲良いくせに
変に恥ずかしがる太輔に微笑み返すと
なんだよ、って急に涼しげな顔になる。









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「でも、普通に気になるから。
俺が玉森に負けた理由」






夏の蒸し暑い風に、
また胸が熱くなるような太輔の視線。
ほんと、叶わない。
いつまでたっても思い出させるから。








「・・・負けたわけじゃないですよ？」



「なんか、ちょっと悔しいじゃん。
全然タイプの違う奴に取られたんだから」






“····なんてね、うそうそ。
Aが好きで行ったんだから
取られたわけじゃないよ”





少し絞り出すような声で呟くと、
私が初めて見る嘘みたいな笑顔で
今度は私の頭を優しく撫でた。

いつもいつもそうやって頭を撫でられて、
慣れているはずなのに。

やっぱり今日も、動揺してしまった。

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