第百六十六話「トモダチ」 ページ6
僕の父は、商人だ。
本来ならば先祖代々受け継がれるこの短剣は、父上が引き継ぐものなはずだが
あいにく、僕の父はそんな才能を持ち合わせてはいなかった。
その反面、彼は愛想がよかった。
いつもにこにこと意味なく笑っているその顔。
祖父はふしだらだと批判していたが
それは接客業むきの才能。
僕がいつも笑っている理由は、きっと父親の血を引き継いでいるからだろう。
父は結局、祖父から脱走し、商人になるという夢を果たした。
しかし、祖父はそれでは黙っていない。
父の子供をさらうように自分の身元に置き、
短剣の跡継ぎにさせたのだ。
その跡継ぎが僕。
そんな僕の人生を変えたのは、
いつの春だったか、
両親のもとへと戻っているあの、桜の舞い散る春。
友達のいない僕が、桜の木の上でぼんやりしているとき、
彼にあったことだ。
・
・
・
今日も、ひとり。
A「トモダチのつくりかたって、どうやるんだろう」
ぽつりとそんな言葉をこぼして、
桜の木の上で僕の生まれた町を見る。
にぎやかそうなその町が、どうもまぶしくて。
A「いいな…」
なんて、小さくこぼしていた。
・
その時、彼は現れた。
最初は女の子かと思った。
細い体に、綺麗な着物。
真っ白に、光を反射する、髪の色。
僕はその子の瞳の色が見たかった。
どんな目の色をしているんだろう。
どんな子なんだろう。
どうしてこんなところにいるんだろう。
ふつうの女の子は、刀を持っているのだろうか。
普通の子供は、どんな時に笑うのだろうか、泣くのだろうか。
A「ねぇ、そこの君」
すごく、気になった。
僕が子供に話しかけることなんて、初めてだったけれど。
すんなりと自然にのどから言葉がでてきた。
？？「……っ」
すると、その子は警戒したような目をして、桜の木をにらむ。
あ、この子の瞳は赤い色だ。
綺麗な、もみじの色。
僕が瞳を見ている間にその子は刀を取り出したらしい。
僕はあわてて
A「やだな、そんな警戒しないでよ」
そう言って、桜の木から飛び降りた。
そこから僕と、その子……千景君との物語は始まる。
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前田のさぶ(プロフ) - 初めてこんなに感動しました、とても切なくていいお話で涙が止まらなかったです。夢小説でこんなに感動したのは数年で初めてでした本当にありがとうございます！🥲お疲れ様です😌😌 (2022年8月31日 11時) (
レス) @page36 id: aeb32198b3 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 最高から一気に読ませていただきました。このような最高な作品を作ってくれてありがとうございます！本当に涙が止まりませんでした。本当にありがとうございます！何度でも読み返していきます。 (2021年7月16日 4時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 最高でした…。 (2021年3月18日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
彗羽(プロフ) - 泣きました。とてもしあわせな作品をありがとうございます。アニメにそうのではなく、オリジナルの展開がたくさんあって、本当に楽しく読ませていただきました。また、読みます。何度でも読みたくなるお話でした。 (2018年12月16日 13時) (レス) id: 3386061a83 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最初から読ませていただきました！ほんとうに素晴らしい作品です！！ありがとうございました！ (2018年8月9日 17時) (レス) id: 534d1c515e (このIDを非表示/違反報告)
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