��-4 ページ38
第百八十七話「残酷な言葉」より
羅刹となった風間は消え、屋敷に炎がともり、激しく燃え上がる。
血を大量にだし、息が細くなったAを抱えて燃え上がる屋敷を出た沖田。
腕に抱えられていたAは意識が朦朧のまま、目を開ける。
そこは、真っ赤に燃え上がる炎の中ではなく、
透き通った青空の下だった。
沖田「……生きてる、ね。」
彼の安堵している声が、屋敷の燃え盛る音より近く聞こえる。
生きている。
そんな奇跡を、彼は起こした。
A「沖田………くん」
小さく彼の名前を呼ぶと、沖田君は私の顔を見る。
心配した彼の顔に、手を近づけようとしたが、腕はもうあがらなかった。
A「とまって……かお、みた…ぃ。」
か細くなった声で、彼に懇願する。
わたしのその頼みに「でも」と躊躇した沖田君に、私は拍車をかけるように「お願い」とつぶやいた。
彼はつらそうな顔をして、立ち止まる。
そうして立ち止まった沖田君に、新選組の生存を聞き、私は心の底から安心した。
皆、生きている。
死んでしまったのは、千景君。
そして、
これから死ぬのは、私だけだ。
もう一度沖田君の名を呼ぶと、彼はひどく悲しそうな顔をした。
彼は知っている。私がもう、あの桜の木の下にはいけないことを。
涙ぐんだ目で私を見つめ、私が約束を果たすことを待っていた。
私は、彼を見つめる。
約束を、果たすために。
彼を、私の後に死なせないように。
茫然とした意識で彼の瞳を見つめた。
時間が、ない。
言わなくては。
そう、思った瞬間、固まっていた私の喉は小さく開く。
A「………好き」
最初に思ったこととは違う、
彼だけを思った言葉を、つげるために。
沖田「…………え？」
A「…………あれ？」
間違えた。
ここの台詞、「生きて」だ。
間違えた。
きょとんとした沖田君の目が、愛おしさに変わる。
そんな顔をしないでほしい。
間違えたとは言いにくい。
沖田「男より先に言うなんて、ずるいよ」
A「………ぇーっと…」
沖田「僕のほうが……君のことを愛している」
「沖田君、言いたかったことは違う」という前に、彼に強引に唇を奪われた。
それは喜びの涙が入り混じっていても、甘い。
私はこうして、沖田君の口づけによる窒息死で命を散らせた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 475人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
前田のさぶ(プロフ) - 初めてこんなに感動しました、とても切なくていいお話で涙が止まらなかったです。夢小説でこんなに感動したのは数年で初めてでした本当にありがとうございます！🥲お疲れ様です😌😌 (2022年8月31日 11時) (
レス) @page36 id: aeb32198b3 (このIDを非表示/違反報告)
美姫(プロフ) - 最高から一気に読ませていただきました。このような最高な作品を作ってくれてありがとうございます！本当に涙が止まりませんでした。本当にありがとうございます！何度でも読み返していきます。 (2021年7月16日 4時) (レス) id: ac5aee6225 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆粉 - 最高でした…。 (2021年3月18日 22時) (レス) id: a216a85358 (このIDを非表示/違反報告)
彗羽(プロフ) - 泣きました。とてもしあわせな作品をありがとうございます。アニメにそうのではなく、オリジナルの展開がたくさんあって、本当に楽しく読ませていただきました。また、読みます。何度でも読みたくなるお話でした。 (2018年12月16日 13時) (レス) id: 3386061a83 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 最初から読ませていただきました！ほんとうに素晴らしい作品です！！ありがとうございました！ (2018年8月9日 17時) (レス) id: 534d1c515e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
