私の主役は私じゃない？

No.1 美少女っていいよな ページ3

『誰だよこいつ』

寝起きの頭でフラフラと洗面台に向かい、さて今日も一日死んだような人生送るかと鏡と対面する。

すると

『美少女目の前におるんだけど』

私は朝でこんなに死んだ精神を秘めてるというのに、鏡の中の彼女は憂いを帯びた瞳でこちらをみつめてる。

長い黒髪は朝の光を浴びて艶かしく光り、大きい黒曜石のような瞳はダイアにも負けない輝きを放つ。すげぇ天使の輪もあるじゃん。

鏡の中の妖精か何かですかね。これ何時間でも眺めてられるわ

『うーん？』

そこで一つの疑問点に気づく。鏡の中に妖精がいること、ではない。いるだろ鏡の中に妖精さんは。ではなく

『なんで私が映ってねぇの？』

鏡に手を伸ばす。鏡は本来の役割をしっかりと果たしてはいない。だって妖精さんが私の真似をしてるんだから。これ鏡じゃないのか？

いやいや、いやいやいや！！まて！

『ちょっと待て私！なにこれ！？』

ようやく頭ン中のお花が枯れはじめ、通常の思考が戻ってくる。そして、またしても気づくことがある。

『こんな映画見たか？』

まるで自分の視点で描かれてるような、そんな映像が頭のシアターで放映されてる。こんな不思議な映画なら絶対見たこと覚えてるはずなんだかな。

しかも不思議なことにこの映画、ところどころシーンが飛んでる。あとなんか胸糞悪い。主人公が嫌がらせや暴力を受けてるシーンが多い。

『朝から気持ち悪』

洗面台に手をかける。顔を洗ってスッキリしよう。水道に目を向けると

『あれ？』

私の家の水道こんな西洋じゃなかったんだが。イヤな予感が全身を貫き、あたりを見回す。

『・・あれ？』

ここ何処だ？なにこの西洋風の建物。私ジャパニーズなんだが。

『・・いやいやまさか』

ここで最後に気づいてしまう。オタク脳がビンビン反応する。無意識に閉じていた蓋が、音を立てて弾け飛ぶ。

『うそだろ』

中には紙が一枚。
［トリップしたか？］
なんて
馬鹿げてんだろこれ

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