元カノは目移りしない。 ページ37
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回らない寿司屋で夕食を済ました二人は、程よく酔いながら山下公園まで歩いた。
「中原、我ら歩き過ぎ〜〜〜」
「酔い覚ましにはイイんだよ馬鹿」
そう、横浜駅西口方面にある寿司屋から山下公園へは徒歩1時間はある。
今まで通り、Aを酔わせてそこら辺のゴミ捨て場に捨てるという作戦を立てた中原は寿司屋で嗜む程度しかアルコールを摂取してない。
それに対してAは、どこからが
というか存在しないに等しいだろう。
彼女の場合、全時間酩酊状態と言われないと可笑しい。
「ちょ、待って中原!!」
突然中原の前を歩くAが叫んだ。
「どうした」
「太宰がいる!!」
「…は?」
深夜0時を超えた山下公園に、怪しげな男一人。
「あの街頭にあの首まである包帯、あの中原より五倍はありそうな身長」
完全に太宰だよ!、と中原の肩を掴み揺らすAは、また中原の右ストレートを喰らった。
「でも彼奴がどうしてこんな真夜中にこんな所に居んだ?」
まあ興味ねェが、と中原は云う。
「そりゃあ逢引だよ中原!分かってないな〜、一回人生やり直してくれば?」
「じゃあなんで一人なのか云ってみろ」
「そりゃあ、鏡持ってれば自分と逢引できるじゃん」
______静寂。
あの中原でさえ、黙ってしまった。
ザザンッと波が壁にぶつかる音が暗い公園に響く。
「も、もももももしかして、幽霊フェチ?」
______静寂。
中原は自分が酔っているのかと疑った。
先刻までAと会話をしていた自分を殴りたくなった。
こんな奴、適当な理由をつけて放っておけばよかった。
こんな奴、寿司屋のネタにしてもらえばよかった。
「中原ー!太宰、散歩してただけだってー!」
中原が思考停止している間、Aは太宰の所に行き直接聞いた。
その時初めて中原は太宰に感謝した。
本当に散歩してくれてありがとう。
本当に山下公園に来てくれてありがとう。
「…よし」
中原は何事もなかったかのように、くるりと踵を返し帰路に着く。
Aはもう太宰の方へ行った。
俺はやっと自由の身だ。
こんなにも生きてて良かったと思うことはない。
太宰への感謝とほんの少しの謝罪を胸に、明日の朝ご飯を何にするか考えた。
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「なんか中原帰ったから太宰遊ぼ!」
「…入水自 殺なら」
「わーい」
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シュピーゲルアイ - 大好きです。更新待ってます。 (4月9日 21時) (レス) @page37 id: af33028691 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ - 好きすぎます (2月20日 3時) (レス) @page37 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
米粉めこ - 最高です!面白すぎて腹筋こわれましたwww (12月10日 18時) (レス) @page36 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
ああ - こういうお話好きです!続き待ってます!!! (2022年9月18日 16時) (レス) id: f16cf667ce (このIDを非表示/違反報告)
遠藤氏(プロフ) - 三斗(トリップ願望者)さん» 自分も笑ってこようって思いまして、入社試験の回を読もうと思ったらどれが入社試験の回なのかわからず、どうしてこんなサブタイにしたのか後悔してますwww (2022年7月30日 18時) (レス) id: d7905a84e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠藤氏 | 作成日時:2020年5月13日 20時