オンナの本能 ページ32
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久しぶりにマスターのお店で、さおと飲んだ。
「A、焼酎こぼれるよ」
「あ、…ごめん」
持っていたグラスが思いのほか
傾いていたことを
指摘されるまで全く気付かなかった。
「大丈夫？もう酔った？(笑)」
「…少し、考え事してただけ。
ごめん思考回路を切り替える(笑)」
「そんなのムリしなくていいけど…
ただの考え事？違うでしょ」
「……」
お刺身を食べようとして持ち上げた箸が
さおのその言葉に止まった。
さおの視線を感じながら
深く溜め息を吐いた。
さおには昔から、隠し事が出来ない。
幼なじみの彼女へ顔を向ければ、
グラスの焼酎を飲みほしたさおが
困ったように口を開いた。
「Aのそんな顔、久しぶりに見た…」
「…参ったね、まだ私…そんな酔っ払って
ないんだけど」
「ごまかそうとしなくていいよ…(笑)」
酔ったフリしようとした私に
少し困ったような表情で私を見つめるさお。
「ネットで、チラッと読んだけど…
彼と一緒にあのサキ…ってコが仕事するからでしょ？」
私の思考は、やはりさおにはもろバレか…と
苦笑がもれた。
私は、翔ちゃんの仕事に関して
普段はあまり聞かない。
だから、今回もあれ以来何も聞いていない。
…だけど、知りたいと思うのは
オンナの本能なのだろうか…
翔ちゃんを好きになればなるほど
そういう気持ちがどんどん大きくなって
どうしようもなくなる。
知らないからこそ不安になる。
サキさんと一緒に仕事をするって聞いてから
帰りが明け方近い時とか
心配で眠れなくなる。
なにしてるんだろうって…って考えると
不安で不安で堪らなくなる。
一緒にいる時は優しくしてくれるし
翔ちゃんを信じていないわけじゃない。
漠然とした不安が胸の中に広がっているのは
サキさんが翔ちゃんを好きなんだ…って
感じることが、一番大きいからだと思う。
だからって、これからサキさんとの仕事は
辞めて欲しいだなんて思わない。
それに、そんなことを言う権利は私にはない。
「大丈夫？」
「え……？」
どうやら自分の世界にいたらしい私は
さおのその言葉にハッとした。
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作者名：ミイ
| 作成日時：2014年9月9日 23時
