呪術廻戦〜貳爪探し〜

贖罪の為に捨てたもの ページ19

虎杖君の紹介を聞いた後､運転手…伊地知さんの軽い紹介をされた

「それじゃ､発車しますよ」

「2人ともシートベルトした？」

助手席に座った五条先生が私達を振り返る

『はい』

「ちょっと待って今してるとこ！」

隣でガチャガチャとシートベルトをいじっている姿を横目に､私は久しぶりに乗る"車"の中をキョロキョロと見回していた

その時､左側の窓からコンコンッと叩く音がする

ゆっくりと窓がスライドして開き､麻倉刑事が顔を出した

「…気をつけろよ」

『はい 何から何まで…ありがとうございました』

私は素直に感謝の言葉を述べる

その言葉に､刑事は少し後ろめたそうに目を伏せた

「実の所は…その歳で､呪術師なんてモノやらせたくなかったんだが…」

『…？』

何処か含みのある言い方

呪術師というモノはそんなにもブラックなのか？

「…俺もな､嬢ちゃんくらいの歳の頃に呪術師を志したことがあってな…高専にいた時期があったんだよ」

『そうなんですか…それじゃあ どうして今は公安に…』

純粋な疑問

呪術師という聞いたこともないような裏の仕事から警察という表の仕事…

何故麻倉刑事は"警察"というモノになったのか

「…2年の時にな タメの同級生が目の前で呪霊に殺されちまって…折れちまった お前は凄いよ…友人を失って尚 そんな選択が出来るんだから…」

…そうか

あんな化け物を相手にするような仕事､怪我人や死人なんてザラにあるんだろう

ブラックどころの話じゃない…

『…私も､誰かを助けたいとか そんな大それた気持ちで決めたわけじゃないですよ 唯…こうでもしないと私が私を許せない …それだけのことです』

「…そうか」

刑事がそう言ったと同時にゆっくりと窓が閉められた

前を見ると､五条先生が隣の運転席にあるパワーウィンドーのスイッチを押していた

「はーい 時間も押してるし､そろそろ行くよー」

…空気の読めない人だ

私は麻倉刑事にペコリと別れと謝罪の意味を込めて頭を下げる

麻倉刑事が何かを喋った

車のエンジン音で何も聞こえなかったが…口の動きで何となく把握することが出来た

"げ ん き で な"

『…はい』

車が徐々に動き出す

刑事は車が見えなくなるまで…ずっと見つめていた

…本当に､良い人だったな

見た目はちょこっとだけ怖いけど…

「高専に着くまでまぁまぁ長いからさ…少し寝たら？」

五条先生がミラー越しに私を見ながら提案する

…私そんなに疲れてるように見えるのかな？

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