編集作業 ページ25
オフィスにつくなり、パソコンを起動させて編集経過をみせてくれた。驚いたことに彼女は3パターンも作っていたのだ。しかも、そのうちの1つはほぼほぼカットせずに45分の長編動画になっている。残りの2パターンも作りかけというか、中途半端である。
その動画をみた伊沢さんは眉を顰めた。45分動画はみてすらいない。
「A、明日アップするってわかってるよね?」
「わかってます」
「このままだとアップできないじゃん」
「...はい」
「まず、長すぎ!!要点要点でカットして!樋口一葉の『大つごもり』の内容を説明するのにわざわざ冒頭の『井戸は車にて綱の長さ十二尋ひろ、勝手は北向きにて師走しはすの空のから風ひゆう』なんて言わないだろう。...つまりそういうこと!最高でも長くて15分の動画にしてくれ。ベストは8分弱くらい。わかりましたか?」
「...わかりました」
「…俺も教えるから、ほらやるぞ!」
伊沢さんと2人で編集部屋に消えていくのを見送りながら、胸の内は黒いモヤがかかった。
扉の向こうから「ここ!ここは使いたい!」だとか「何回見てもこのシーン笑える」なんていうAちゃんの声が聞こえるたびにモヤが漆黒に近くなっていく。
「…はよーございまーす。お疲れ様です...って須貝さん、顔怖!!!!」
「山本さん、放っておいてくれない?」
「わかった!!Aちゃんんんんんんんんん!!!」
「口封じ!!!」
「...でもさ、やっぱり?」
「やっぱり?とは?」
「ちょっと気になってんでしょ?」
「ちょーーーっとだけね」
「え?どこが?どこが?」
「…どこがって言われると困るんだけど…」
んーどこが?初めて会うようなタイプで、自分のやりたいことに真っ直ぐなところ?考え方?ルックス?
あげていくと、キリがない気がしてきた。
「ねぇ君たち、お仕事してくれませんかね?」
「はーい」
「はーーーい」
福良さんの一言でまたパソコンに向き合う。
其々が編集作業や執筆作業に集中すればするほど、編集部屋からの声が聞こえてきてまたモヤがかかりだした。
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作者名:モスモス | 作成日時:2020年4月13日 0時