き た く ページ12
故意ではない。
たまたま終わるタイミングが合った。すると自然に、まるで学園ドラマの幼なじみかのようにAちゃんは、「いっしょにかーえろ！」と背中に鞄を押し付けるかのように突進してきた。行動自体はかわいいんだけど、鞄の中ってノートパソコンでしょ。結構ドンっときました。
「うお！ちょ！わかったから！わかったから！」
「じゃ！皆様Good night！」
「はーい。2人ともお疲れ様ー」
オフィスのマンションを出て、大通りを2人並んで歩く。別に話題は大したものじゃない。クイズノックのこととか、最近のそれぞれの近況とか。
少し歳が離れているので兄のような感覚で接されていると思う。
でも別にそんなこと大きな問題じゃない。
今の僕にとっての大きな問題は、あの２つ目の信号で別れ道ということ。
このペースだと信号に引っかかることなく帰れそうだけども、出来れば赤信号に捕まりたい。
なんとなく、歩幅が狭くなる。
「あー！赤になっちゃう！ナイスガイ急げ！！」
「もう！子供じゃないんだから！」
チカチカと点滅している青信号を渡り切ると、信号はあと１つになってしまった。
でも、別に、今日しか会えないわけじゃないし！な！なんて心を入れ替えていると服の裾を掴まれる。
「ん？」
「ちょっと寄っていく？」
何かと思えば、路地裏にある立飲み屋だ。
【 生ビール 2杯まで90円 】
デカデカとかかれた表の黒板につられたようだ。
まさか今からお酒を飲むとは思わなかったが、別にいい。
「いいよ？飲みたいの？」
「こうさ！生ビールをで喉をキューっと！キューっと！したいよね！」
「擬音がよくわかりませんが、お気持ちはわかります」
「ねー！いこーよー！」
「いくかー！」
傷まみれの透明なビニールカーテンと暖簾をくぐってカウンターへ。店主の明るい声と、もうすでに出来上がりかけているサラリーマンに迎えられた。
「生中！2杯！」
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作者名：モスモス | 作成日時：2020年4月13日 0時
