夏休み ページ10
結果はどうであれ、テストは終わった。そしてやってくる夏休み。わくわくと少しの寂しさを心に、シュンタは寮の部屋の片付けをしていた。
長期休暇に入れば寮の荷物を一旦全て家に持ち帰らなければならないのだ。荷物が多いので、もちろんシンヤが手伝いに来てくれている。
「夏休みさ」
「ん？」
服を畳みながらシュンタはシンヤの方を見ずに声をかけた。
「映画行こうな」
「当たり前だろ」
「……夏祭りとかも行きたい」
「確かに、行きたいな」
「あとさ、あと」
慌てて話すシュンタに噴き出してシンヤはぽんぽんと頭を軽く叩く。シンヤに触れられてシュンタはやっと顔を上げた。
「焦らなくても後で色々計画立てるから」
映画にも夏祭りにも行ってくれるとシンヤは言ってくれたけれど。シュンタが心配しているのはイベントに参加できなくなることではない。
毎回共に食事をし風呂に入り、時には一緒に寝ていた生活がなくなってしまうことが寂しく、そして怖いのだ。
夏休みが終わり顔を合わせたらもう自分のことなど忘れているんじゃないか。もう一緒に行動してくれなくなるのではないか。そう考えると、怖い。
でも、そんな考えに至っている自分が一番怖い。ただの友達でしかないくせに、何を思っているのか。他の人にはそんなこと微塵も思わないのに。
「シンヤ……」
夏休みが終わってもずっと一緒にいてくれるか、なんて訊けない。シュンタはまたしても顔を伏せた。
「っあー……夏休み会えないのすげえ寂しいからさ。なんだ、その、宿題一緒にしません、か」
たどたどしくシンヤが言う。ぱっと顔を上げればシンヤは首を押さえてらしくなく耳を真っ赤に染めていた。夏の暑さのせいだろうか。
「会うってこと？」
「会ってもいいけど……通話ならいつでも、できるし」
「べ、勉強わかんなかったら毎日かけていい？」
「……！」
顔を見合わせふっと噴き出す。
まだまだ夏はこれからだと。そんな楽しい思いで迎える、夏学期最後の日。
.
ケイタ「なーあ、毎日寝落ち通話しよ」
リョウヤ「やだ」
ケイタ「なんで！！」
リョウヤ「お前絶対先に寝んじゃん！ぜってー嫌」
ケイタ「はぁぁぁぁあ？！」
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作者名：ずずずん | 作成日時：2022年8月6日 19時
