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「それはまた、なんで？」
こういう時に、八雲の優しい声は殺伐した雰囲気を緩和してくれる。
八雲もそこまで優しい人間では無いのだが、彼らの中ではまだマトモであった。
「なに、また猿がどうのこうのってか？」
一方、こういう時に五条の声はより一層雰囲気を悪くしていた。
八雲に叩かれるまで五条は「こらこら傑クーン？」と煽り続けていた。
「いや、ここには呪術師もクソもないからね。別に猿だなんて思わないさ」
「はいダウトー」
家入は時と場合を弁える少女だった。
引き際を最もよく理解しているのは家入であり、今ここで煽るような言葉を発したということは、彼女なりの見解の上であり、現状そう悪くない雰囲気であるという事だった。
「でもね、守られるべきだと思ってる人達を守るのは、気に食わないかな」
世界総人口の八割が何かしらの個性を持つこの社会。
かつての呪術界とは違い、戦える術を持つ者が多かった。
ヒーローになる為の一番の近道は、ヒーローを育成する学校に進学することだった。
例を言えば、七海たちが通っているかもしれない雄英高校。
ただ、ヒーローになりたいと思う人は大勢いた。
つまり、ヒーローになれずに零れてしまう者も大勢いたのだ。
戦える術を持っていながら、認められずに、一般人として過ごす人たちもいるということだろう。
なんとも不平等な社会だ、と思う。
「じゃあ、ヒーロー辞めるか」
「ヒーローにならなくても雄英には行けんだろ。ほら、普通科とかあるし」
「あ、じゃあ普通科行こうよ」
夏油は思わず目を見開いた。
五条の携帯で雄英のホームページを見る彼らの表情に嘘偽りはなかった。
「…え、なんで」
「オマエが嫌なら行かない。それだけだろ」
「五条もそこまでクズじゃないってことさ」
「私たちがヒーローって、なんか、ねぇ？」
「いや、でもさっき、ヒーローに、最強にって」
「そりゃアイツらに会う為の近道だって話だよ。んでもって、ヒーローやるっつーなら最強じゃねえとなって話。別に俺らヒーローになりたい訳じゃねーし、寧ろなりたくねーし」
それに、と五条は続けた。
「言ったろ。オマエが嫌なら辞めるって」
嗚呼、と夏油は思った。
もう二度と戻れない過去。今更悔いはなかった。
けれどもしもあの時、親友の彼に全てを話せていたのならまた違う未来を歩んでいたのかもしれない。
夏油は少し、むず痒い思いをした。
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あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
