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悶々とする夏油の思考を遮ったのは夜蛾の言葉だった。
「ところでお前は、ここに何しに来た」
夜蛾の目は真っ直ぐに夏油を見つめていた。
夜蛾は確かに"お前は"と言った。
夏油は知らないが、夜蛾は夏油の離反後、新入生に対して面接を行うようになった。
夏油はかつて、自分で示した呪術師のあるべき姿に悩んだ。悩んだ末に離反の道へと歩みを進めてしまったのだ。
夜蛾は酷く後悔した。生徒に寄り添えなかったこと、それに気付いてあげることが出来なかったこと。
そして夜蛾は決心したのだ。
もう二度とそのようなことが起きぬように。
夜蛾は予め新入生とコンタクトを摂るようにした。
確かに夏油の掲げた信念は実に模範的であった。模範的であったが故に、挫折してしまったのだ。
「…何しに来た、と言うと？」
「お前はここでどうするつもりだ。どう生きるつもりだ」
夜蛾は既に五条と家入、そして八雲の生き方を知っていた。
八雲は呪術界を変えようと抗い、その意志を五条は継いだ。
家入は医師免許を(ズルをして)二年で取得し、その後は高専所属の医者として皆を支え続けてきた。
しかし、夏油は違う。
夏油の意思が夜蛾には全くと言っていいほどわからなかった。
夜蛾は正しい教師であった。
今ここで夏油の心の内を暴かない限り、夜蛾は夏油を仲間として認めることは出来なかったのだ。
「そうですね…どう、生きるか…」
夏油の隣にはいつしかと同じように五条が、八雲が、家入が居た。
ここに生まれてからの十数年、かつては仲間だったとはいえ一度は敵となった自分を見放すことなくずっと傍に居続けてくれていた。
心の底から笑えなかった。
確かに夏油はそう言った。だけど、そうだったけれど。夏油の記憶には確かに青い春があった。眩しくて仕方の無い日々は、確かにそこに存在していた。
もしも、許してくれるのなら。
彼らがそれを、許してくれるのなら。
「傑」
ハッとして横に座る五条を見て、そして夏油は呆れたように笑った。
五条の顔の半分は黒い目隠しによって遮られていたが夏油には五条が何を言いたいのか、しっかりと伝わっていた。
今も今までも、これからも。夏油は五条のたった一人の親友だった。
「かましてやれ」
───
※学長の面接云々の話は完全に私の妄想です。
御理解の方よろしくお願いします。
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あお - 間の開け方とか言葉選びとかすごい良かったです！！ (2022年8月28日 20時) (
レス) @page18 id: c1da01ed72 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 呪術師側のイカれ具合とか、ヒーローに対する嫌悪とか、全て大好きです。 (2022年1月2日 15時) (レス) @page50 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
あかし - あくまで私個人の感想です。書き方やオチ希望してる方がいますがこれは作者様の作品です。書き方も展開も終わり方も全て作者様の自由です。私はこのままの作品が好きですし、作者様の自由にして下さい。言葉選び、文脈全てが大人で素敵です。これからも応援しています。 (2021年8月7日 14時) (レス) id: 9951821a6a (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
天宮 - 誰が喋っているのか聞いてくれないとわかりません。 (2021年6月28日 8時) (レス) id: 453c097156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年2月11日 11時
