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「兄ちゃん、またなんか壊したの？ 隠したって無駄だよ！兄ちゃん、嘘なんか吐けないんだから。貸して？……ま〜た年下のやつ泣かせたんだろ。みんながみんな、オレみたいに強いワケじゃないんだからさ。いつやり返されても、知らねーよ？ホント。ま、そんな兄ちゃんのことも気に入ってるけどね〜。オレはさ！ はい、できた。ちゃんと返して来なよ」
「兄貴は良い奴だよ。でも、正しい人じゃ無い。……あ！勘違いしないで、オレは兄貴のこと大好きだから。……でもまあ、好きに生きてほしいよね。オレはオレ、ルースはルースで生きるべきだし？ 兄弟であることに固執する理由もないと思ってるから。……何より、もう、顔向けできないよ」
「犠牲って必要なんだよ。人を集めるのに、人をまとめるのにさ。だから、兄貴は神様に捨てられたんだろうよ。もしかしたら魔法族って気づかずに一生を終えることだって、頑張れば出来たかもしれないし。でも、オレは気づかせてしまった。それにあろうことか、他の皆と一緒に兄貴を叩いてしまった。オレは、罪人だ。弱い人間だ。だから……もう、失いたくない。可能な限り、みんなを分かってやれるオレで居たいんだ！」
「お前みたいな、まっすぐな人を愛するために、オレは今も息をしてるんだと思う。ありがとう、生きててくれて。……お前のその生き方が、オレを正しいって、頑張るべきだって、認めてくれてるんだ」
「っふ、ははは、…っはは、あ〜もう、っ…ふふ、愛してるよ、馬鹿野郎！」
【生い立ち】
物心がついた時には、神聖こども会に居た。三歳年上の兄と共に、悠々と時間を過ごしていた。母の顔も、父の顔も覚えていない。気づいた時には、あたたかい兄の手が自分の手を引いていた。
活発な兄とは違い、ブルーノは控えめで、部屋の中で本を読むのが好きな大人しい子であった。しかし、さすがは兄弟といったところか、興味関心の疼く場所は同じであったらしい。広い広い教会を、隠れて探検するのが二人の楽しみになっていた。
そんなある日、ブルーノは焼却場である大きな本を見つける。兄と二人で見つからないようにこっそりと部屋へ持ち込み、そのページを開く。読めない単語が並ぶ。頭の良い兄にとっても解読は難航しているらしく、目を細めて、ようやくひとつの単語を口に出して詠んだ─────モーヴス、と。
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作者名：松宮カナメ | 作成日時：2022年5月21日 0時
