【男攻主】テリーヌ型のプリン【東海ｵﾝｴｱ】 (ページ30)

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灰ゾーン・エージェンシー / 架空の第○○話「交差する思惑」5 ページ30

一瞬パリッとしているけど、やっぱり"らしく"着崩されているスーツ。そして目立つつぶらな瞳にぽてぽてのほっぺ。じんわり幼さがあるはずなのに、なぜか読みとりづらい面倒臭さが醸し出されている。そこに平然と居たのは間違いなく、あいつ、俺たちのメンバーだった絹滓簾だった。

スンッと底の知れない冷たさを孕み、陰鬱の波に自らを沈み込ませるようになっていたそいつのズルズルと引きずられる顔は、はたとこちらに気づいて振り向いた途端にやわ、とした俗っぽい明るさをまとう。そしてなんでもない風をカーテンコールでよそおってからこう告げるのだ。

す「あっ、おひさやんなー、てっちゃんら。いつから来とったん、今日の下着何色ぉ？種類も教えてくれていいんやで。そんくらい期待してもええやろ、俺たちの絆は仕事じゃないんやし？」

て「どうもこうもねぇってぇ！なんで社員の人たちがいっちょまえに事務室で将棋倒しになってんんの！もしかしてコレ、お前がやったんじゃ……？」

とり残されたそいつの、昔ならやらんかっただろなという寂しい微笑は、大いなる策謀でも企んでいるみたいに悪らつに盛り上がってから、ひとりだんだんと影の中へ途切れていった。

会社の闇見せてごめんなぁ、さっさと片づけるわ。というかゴミまき散らしたのは俺やけど、何か問題でもあるん？景観を害すってことだけ？

と白いポロシャツの襟を正してから本当にどうでもよさそうに言うさまはうっすらと寒気を覚えてしまうほどだ。こんな自分を支えてくれる縁の下の人らを見下すこと、少なくともこいつには絶っ対に言ってほしくなかった。キャラ崩壊もいいところだ。

り「あのさ、すだれ、久しぶりに会ったばっかなんだけど、この会社に入ってから色々あってね。お願いしたいこと、いっぱいあるんだ。話だけでも聞いてくれる？」

す「あぁっ、もしかして労働環境が悪すぎるとかそういうやつぅ？りょーちゃんみたいな大物でもそんな疲れ果てるんやね。みーんな困っとったもんねぇ、俺も機会があったらどうにかしたげたいと思っとったところやわぁ」

り「！ ……っ、それならちょうどよかった、それじゃあ早速社長にかけあって」

そもそも床に無造作に社員が転がされてる環境に置かれているところで、全てを察するべきだったのだ。表情に陰りのなくなったりょうがそこまで言ったところで、すだれは神妙そうにこらえていた笑いを外側にくすぶらせ始める。
　