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十輪 ページ10

何コール目かでぷつりと音が途切れ、少し気怠そうな声が聞こえた。


「もしもーし、こちら岩井探偵事務所でーす。ご用件は何ですかー?」

『大学はどうしたよ、弟』

「あ、その声はもしかしなくても、姉ちゃん!?」

『そうだよ、(さとる)。久しぶり』

「姉ちゃん、久しぶりどこじゃないよ!!何年ぶり!?」

『そんなに経ってないよ。それより、今日会える?』

「え、嗚呼。会えるけど...なんかあった?」

『ちょっとね……』

「そっか、わかった。……俺が姉ちゃん家に行こうか?それとも―」

『やっぱり、今日泊めて?』

「……!おう!!わかった!!部屋、綺麗にしとく!!」

ぷつん、と電話が切れた。
久しぶりに聞いた弟の声に荒れていた心が清められていく。
しばらく、仕事も休んでしまおうか。それとも、日本から出て行ってしまおうか。

弟の家に行く前にある程度の荷物を纏めておく。愛車に荷物を詰め、八雲紫の家へと向かった。
八雲用の荷物も詰め、弟の家へとむかった。




*



「よっ!姉ちゃん!久しぶり!!」

姿を見つけるなり、勢いよく飛びついてきた。


『うわっ...!ちょっと、外で抱き着いてこないでよ。
とりあえず、盗聴器。発信機の確認してもらってもいい?』

「おっけー。でも、もう確認済みだよ。
姉ちゃんにはついてなかったけど、姉ちゃんの車には着いてたみたいだから、適当にドライブ行ってくるよ。キー貸して?」

『はい。
いつもありがと。先に家の中入ってるね』

「うんうん。
姉ちゃんの好きなココア入れといたから、好きに飲んで寛いでて〜」

抱き着いたかと思えば、キーを受け取るなり、すぐに離れて車に乗って出て行った。
それじゃあ、家にお邪魔させていただくか。


『おじゃましまーす……』

「ただいま、だろ?姉ちゃん」

『え?
帰ってくんの早くない?』

「俺のドラテクにかかればこんなもん……って、イデッ!」

頭に手刀を落とす。
ドラテクって必要以上に使うなよ。警察に目を付けられたらどうするつもりだったんだよ。


「大丈夫!零さんがいるし」

探偵あるまじき不用心な発言に軽く弟をにらみつける。


「あっ、嗚呼!ごめん。降谷さんがいれば大丈夫だよ。それに俺だよ?日本のホームズだよ?」

『日本のホームズだろうが、ダメなものはダメだって』

「ははっ...ごめん。今度から気を付けるよ」

弟の反省じみた言葉を聞いて、やっと家の中に入ることができた。

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作者名:シャラルー☆ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年6月16日 16時

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