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歌への愛5 ページ13

歌手が舞台に立つ。ピアニストは相変わらず緊張気味だったが、真っ直ぐ譜面を見て、鍵盤に手を置いた。
歌手がピアニストに目線を送る。ピアニストはそれを受け止め、小さく頷いた。
それから二人で呼吸を合わせたところで、ピアノの前奏が紡がれる。一音一音、丁寧に新しい糸を紡いでいくように繊細に。哀愁漂うメロディラインは先程歌手が歌っていた曲と通じるところがある。
流れるようなスムーズな進行。けれど、速いとは感じない。例えるならば、小川が静かに目の前でさらさらと流れているようなものだ。どこか、涼やかさも感じられた。
歌手はそんな小川のようなイメージに合わせてか、水色の柔らかい透け感のある布を幾重にも重ねたドレスを纏っていた。透け感といっても、そこに厭らしさは感じない。むしろ清楚で、清涼感を醸し出している。きっと、彼女だからこそ、そう感じるのだろう。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:九JACK | 作成日時:2019年10月25日 13時

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