ちぐはぐ【剣城京介】 (ページ6)

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■疲労

　時間は過ぎサッカー部の練習が終わった。あの後も休憩が入れば学年関係なく、他の部員も気さくに話しかけてくれて口を揃えて困ったことがあれば頼ってくれと言ってくれた。その度に鋭い視線を感じたが、確かにこんな優しい人たちならサッカー関係なく人気があるのも頷ける。

「A！」

　一緒に帰ろうと誘ってくれた空野さんを待っていると名前を呼ばれた。振り向くとそこには円堂監督が立っていた。10年前の世界大会で日本代表のキャプテンかつ、優勝に導いたかなり凄い人らしい。私が疎いだけかもしれないが、正直初見では熱血な先生の印象を受ける。裏表を感じず笑顔が眩しい。部員からはもちろん、生徒からも人気がありそうだ。

「今日はサッカー部の練習観に来てくれてありがとな！
　転校初日だと気を張って疲れただろ。今日はゆっくり休んでくれ。」

「はい、是非そうさせてもらいます。」

「明日も何か部活動見学するのか？」

　正直新しい環境のためか今日一日での疲労感が強く、明日以降のことは全く考えていなかった。しかし今できる限りで明日のことを思考してみたが、どうにも頭が回らないのが現実だった。

「すいません、特に考えてなかったです。」

「そうか、サッカー部は見学でも飛び入りでもいつでも大歓迎だからな！」

　ありがとうございます。とお礼を言うとじゃあな！気を付けて帰れよ！と言って踵を返し、円堂監督はその場を後にした。飛び入りとはいったい何のことだろうか、サッカーに対して心が広すぎやしないかと思いながら、部活終わりの生徒が帰っているのを横目に空野さんを引き続き待つことにした。

・

「Aさん！遅くなってごめん！」

　割と遠くから発せられた声の主は、部活終わりだというのに走ってこっちに向かって来ていた。いくらマネージャーといえども運動部だ。きっと疲れているのだろうになんだか申し訳ない気持ちがある。そんなことを思っていると、彼女の後ろを付いてくるように走ってくる人影が伺えた。

「Aさん！せっかくだから俺たちも一緒に帰っていい！？」

　空野さんと共に距離を縮めてくるその人影は全部で４つ。それらは次第にはっきりと分かり、松風くんと西園くん、嫌な顔をしながら引っ張られていた剣城くん。そして影山くんだった。

next.

一年生で彼だけいないのはわざとです。夢主と会ったときに一人でアタフタすればいい。というよりさせます。