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No.14:祈り ページ15

藤襲山は想像していたよりも広く、Aは善逸を見つけることにひどく苦戦していた。



『…それに、藤の花のせいで善逸くんの匂いも分からない…』


藤の花は鬼の視覚や嗅覚なども奪っていくらしい。

そりゃあ鬼はこんな山には近づかないわけだ。

Aは善逸が向かっていた山の方向を覚えていたから、奇跡的にたどり着くことができた。




Aは焦る。


善逸の姿が見当たらない。



このままじゃ目的を達成できない_善逸くんは生きているだろうか。


もし彼が強くても鬼に囲まれでもしたら叶わないんじゃないだろうか。

最悪、もう死んでいたりなんて。



途端に目蓋が熱くなる。


『ぜん、いつくん……どこなの…?』


お願い、どうか、


『……死なないで』


……


「ぎゃあああああ!!!!!来ないで!!!!俺は美味しくないですからああああああああ!!!!」

といつもの悲鳴が遠くから、でも確かに聞こえてきた。


『今の声…もしかして』



Aは拍子抜けしたように笑って悲鳴のした方向を見つめる。

流れそうだった涙はもう引っ込んだ。


『…良かった、分かりやすいなぁ』


Aは空中を高く跳び、善逸の元へ向かった。



✤✤✤✤



「ぎゃあああああああああ!!!!もうやめてええええ」



善逸は3匹の鬼に追いかけ回されていた。


善逸の付近に辿り着いたAは善逸の安否を確認することができ、無事でよかったと安堵する。




彼に気づかれないように高い木の上に立つ。


怪我も見たところ特に無さそうだ。

それに、この山には十二鬼月ほどの強い鬼はいなかった。



『(…多分、私が鬼に直接手出ししたら、きっと無惨様に気づかれる)』


気づかれたら善逸の存在も知られ、彼がどんな仕打ちを受けてしまうのか分からない。

だから、今回は彼の勇気を祈るしかない。



「……」
〈カタン〉



しかし、善逸は鬼に囲まれた状態で気絶してしまう。


刀が、勢いよく地面に落ちた音が響いて。

『!!!善逸くん!!』


思わずAは叫んでしまう。

鬼はニヤリと汚く笑って、複数同時に善逸に襲いかかる。


食われる、とAは焦った。





『(…使うか?血鬼術)』



このまま彼が鬼に食われてしまうのならいっそ、とAは覚悟を決め、爪ですぐに掌を斬れるように備える。


しかしその心配はなかったとすぐにAは分かることになる。

No.15:一閃→←No.13:藤の花



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作成日時:2020年1月23日 15時

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