No.12:鼓舞 ページ13
……
『そっかぁ、もうすぐ最終選別ってやつがあるのね』
「そうそう。そのせいか知んないけど、最近じいちゃん今まで以上に厳しくなっちゃってさあ」
善逸の言葉に、Aは『確かに』とクスリと笑う。
善逸が逃げようとしたら何がなんでも掴まえてくれたり。
善逸が挫けそうになったら叩き起してくれたり。
善逸の師匠の話は、彼の話題の中にいっぱい出てきたから、Aはよく覚えていた。
善逸が怯える〔最終選別〕。
鬼殺隊に入るための条件で、鬼殺の剣士が生け捕った鬼が棲まう藤襲山で7日間生き抜かなければならないらしい。
とても厳しいな、とAは思う。
もし私が人間で藤襲山に入れば__
「死ぬ死ぬ死ぬ死んじまうよお。
こんなに俺弱いのに生き残れるわけないよお、せめてAちゃんと結婚したかったよお」
なんて、現実の彼は悲観するが。
『(…そんなわけないんだけどな)』
そう思ってAは善逸の泣いている横顔を見つめる。
彼は決して弱くない。
だって彼の目は酷く怯えているけれど、ただただ怯えているだけじゃないのだ。
努力を続けた人の目。
だからAはそんな善逸を安心させるために優しく微笑む。
『…きっと大丈夫だよ、善逸くん。
生きて帰って、また私とお喋りしてくれるんでしょう?』
すると善逸は泣くのをやめ、しかしまたすぐに決壊して、
「……………むりかも」
『やっぱだめか〜』
良い雰囲気でたぶらかす作戦は失敗に終わった。
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作成日時:2020年1月23日 15時