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「なぜこのようなことに?」
「殿」
「そうだな、お前から話したほうがいいだろう。」

お義父様が殿に断りを入れてから口を開いた。

「まず、A殿には申し訳ないことをしたな。」
「まあ、なぜお義父様がお謝りになるのですか。」
「実はなあ、あの姫君は昆奈門の…まあ、なんというか、元縁談相手なのだよ。」
「ええっ」

驚いて雑渡様の方をぱっと見ると、気まずげに目を少しそらされた。

「元、だから。しかも、縁談の話がちょこっと出ただけ。」
「そう、わしがいつまでも独り身のこやつにしびれを切らしてひと月ほど前にあちらに文を送ったのだがなあ。」
「忍びと婚姻を結ぶなんて嫌だって即断られたんだっけ。」
「そうなのじゃ、だが今になって心が変わったと文が届いてな」
「それで、この城までおいでになった、と」
「そういうこと。」

うむ、と甚兵衛様が徐に脇息にもたれかかった。

「あやつ、城についた途端、すでに昆奈門に許嫁がおると知ったのかお前を出せと騒いでな。」
「ですから私が呼ばれたのですね。」

はあ、と深い溜め息が甚兵衛様から漏れた。

「A、ご苦労だった。疲れただろう、今日はもう帰るが良い。昆奈門、送っていってやれ。」
「はっ」

甚兵衛様のご好意に甘えて、雑渡様と城をでた。

すでに日は暮れていた。

もうこんな時間なのね、色々あって気が付かなかったわ

もんもんと今日の事を考えていると、あの姫の言葉が頭の中で蘇ってくる。

思った以上に彼女の言葉が、心に刺さって渦巻いている。

呼吸がしにくい。

息を吸うのを阻むかのように、彼女の言葉は私を支配した。

ぎゅっと唇を噛みしめる。

「お前のようなものが昆奈門様の許嫁だなんて」、「面白みもない人だこと」

言葉が、脳裏でぐるぐる、ぐるぐると回る。

心が、痛い。

彼女に対抗する言葉が、何も見つからない、見つけられなかった。

確かに私に面白みはないわ、今は城も姫という肩書もないし、雑渡様にあげられるものは何もないし…

「…え、ちょ…と…おーー…い、ねえ、」

はっと雑渡様に声をかけられていることに気がついた。

星空が彼を照らしている。

「あっ、ごめんなさい、何でしょう。」
「…何考えてたの」
「…いいえ、何も。」

少し微笑んで、誤魔化そうと思ったけれど、雑渡様にそれは通じなかった。







お久しぶりです、楽しんでいただければ嬉しいです!

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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