【ヒソカ】青い果実は仕掛かり品【HUNTER×HUNTER】

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「いい能力だね」

まるで明日の天気でも話しているような呑気さで、クロロが言った。

「どうやって治療しているの？」

言い方に含みを感じて、不審に思った。ヒソカのオーラ別性格分析では無いが、カリスマ的資質を持つ者に多いのが特質系だ。発動条件が会話だとすれば厄介だ。

「…教えないよ。クロロ=ルシルフル」

ぶっちゃけ、どうやって治療しているかなんて問題じゃない。怪我をしていなかったことにする、という辻褄あわせを説明したくもない。

「うん？」

唐突にフルネームで呼ばれて、彼は少し首を傾げた。逃げるべきだ。何を考えているか分からないが、どうせ碌な事じゃない。30秒でいい、クロロが身動きを取れない時間を稼いで逃げ切るしかない。

ところで、怪我をしていなかったことにする、という能力には対がある。怪我をしていることにする、という能力だ。使った事はないが、根底は同じ。

「 お喋り(フロー)…」

黒い幼女を喚び出そうとして、 旅団(クモ)が血塗れのアベンガネを連れてきたのと 無口な看護師(フローレンス)が甲高い叫びをあげたのは同時だった。

「A、治療すべきはアベンガネ」

「治療すべきは、アベンガネよ」

白黒幼女が両腕に絡み付いた。

「クク、甘かたね」

口をマスクで覆っている小男が目を細めて喋った。

「黙れ、…」

歯噛みしても時遅し。フェイタンは意地悪く笑った。

彼らは、アベンガネの生死なんて、ハナから気にかけていないのだ。

心が崩れていく。人質一人で、私は彼らに敗北していた。

それでも、投降を告げねばならないはずの口が、勝手に言葉を紡いでいた。

「…望みは？あなたたち 旅団(クモ)の望みは何？」

他人の命など、いや自分自身の命さえ顧みない盗賊集団。

「関係ない人を傷つけて、殺して！！！アンタ達の望みは何なんだ！！！」

怒りで目の前が暗くなる。何より治す者として、破壊者は許しがたい存在だ。

「てめぇ、団長に向かって偉そうな口聞いてんじゃねぇ」

「いい、フィンクス。望み、か」

青筋を立てたフィンクスを制止して、ふむと思案したクロロは、夜空を切り取ったような相貌で見つめ返してきた。

「俺たちは盗賊だ。欲しいものがあれば、奪う。手段を問わない、それが 幻影旅団(俺たち)のやり方だ」

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