婚約者14 ページ15
聞かれた理由は全く分からないが、そもそも彼女の行動の意味が分かっていたら最初から困って無いと思い直す。まさかこの人がこたぬきとかcrewだとは思えないし、名前を教えることぐらいたいしたことじゃない。それに、俺もこの人の名前が気になる。名前を聞いたら何か、思い出せるかもしれないから。
声が震えないように腹に力を込め、息を深く吸い込んだ。
「浦田、渉」
無愛想だと自分でも思ったけれど、名前を言うだけで精一杯だった。
「……浦田、渉？」
驚いたように目を瞬かせる彼女に黙って頷くと、彼女は静かに立ち上がり、腰をかがめておもむろに俺の前に左手を差し出すとまた黙りこくってしまった。ちなみに俺に名前を聞き返す勇気は無かった。怒んないで。
「…………」
「…………」
「……立たないの？」
「えっ、」
なぜかは分からないが先ほどまでより随分と表情や殺気が柔らかくなった彼女に、首をコテンと傾げられながら問われたことに戸惑いが隠せず、思わず声が漏れてしまう。え、むしろちょっと怖いんだけど何これ？
え、この手って掴んでいい感じってこと？？ つうか、首傾げながら聞くとかあざと可愛いな。美人だから余計に。……あんな体験した後だと恐怖でしかないが。
「あ、ありがとうございます、？」
困惑しながらもいつまでも待たせるのは逆に怖かったので恐る恐る手を取ると、ぐいっと力強く、しかし優しく引っ張られる。
「……敬語じゃなくていいよ。ここじゃなんだし、中で話そうか」
「お、おう」
……誰コイツ。
そう思ってしまうほど、先ほどまでの無表情とはまるで真逆の、ふっと緩められた口元が見えて思わず戦慄する。そしてそのまま先ほどから掴まれたままの手を軽く引っ張られ、部屋の中に連れ込まれる。ちなみに座り込んだ時に取り落としたお土産をさりげなく拾い上げて渡してくれた。イケメンかよ。
「えっとそれ、……君へのお土産だから、返さなくていい」
彼女のことをなんて呼べばいいか分からず一瞬躊躇するが、そのままおずおずとお土産を差し出すと黙って受け取ってくれた。受け取ってもらえてよかった、と少しほっとした。
君、だなんて我ながら少し気持ち悪いが、おまえと呼ぶ勇気はなかったのだ、仕方ない。
「座って」
彼女はそう言うと入ってきた襖と机を挟んで反対の位置にある座布団に腰掛け、手前側に向かい合うように座るよう目で示す。俺はまた黙って頷き俯きがちに腰掛けた。無口？ しょうがねぇだろ、だってまだ怖いんだもん。
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ゆきか - 初コメ失礼します！すごく好みの作品で楽しく見させていただいています！続き待ってます！ (2019年10月28日 16時) (
レス) id: f42ad21887 (このIDを非表示/違反報告)
夢うさぎ??(プロフ) - ゆうりさん» コメントありがとうございます！ あわわ、面白いだなんて……ありがとうございます！！ まだまだですが、より面白い物がかけるように頑張ります！ (2019年7月1日 3時) (レス) id: 4da07b4f90 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうり - 関連作品ランキングにあったので、読んでみたら凄く面白くて一気読みしてしまいました。受験大変ですよね(-_-;)私も去年大変でした。 頑張ってください！応援してます！ (2019年6月30日 16時) (レス) id: 616da87ebb (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - むにゃさん» コメントありがとうございます！ 頑張ります！！ だいぶテストやばいんですが、人生初ライブなんでなんとかしたい、いやしてみせようと思います！！ (2019年4月3日 17時) (レス) id: 8a8c64050c (このIDを非表示/違反報告)
夢@雲雀さんのムスッがかわいすぎてヤバイ(プロフ) - 露都さん» コメントありがとうございます！ 死ぬ気で頑張ります！！ 更新はしばしおまちを……。 (2019年4月3日 17時) (レス) id: 8a8c64050c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢うさぎ | 作成日時：2019年3月26日 16時
