百三話/さよならの一言 ページ3
「撃つ
場所は取調室。椅子に座った杉本と箕浦、そして乱歩。
その三人をマジックミラー越しからAは、敦や太宰と共に見ていた。
彼が何を語るのか、ここにいる皆が注目している。
「ーーーー」
そうして、乱歩達が腰を下ろしてから五分程経った頃だろうか。
杉本の話が大体判ってきた。
彼が云うににはこうだ。
彼女ーー今回の事件の被害者の山際は政治家の汚職事件を追っていた。
そうして調査していく内に、彼女はある大物議員の犯罪を示す証拠品を入手した。
議員はそれを警察内のスパイを使って証拠を消そうとした。ーーそのスパイが、杉本だったのだ。
「昔から……警察官に憧れていました。試験に三度落ちて落ち込んでいる時、男に声をかけられたのです。ーー警察官になりたいか、と」
その議員の力で警官になった杉本は、見返りに議員の指示に従っていたと云う。
それを聞いた箕浦は顔面を蒼白にして問うた。
「それでお前は議員の飼い犬として山際を殺したのか!?」
「ちっ違います!私は彼女に警告を……このままでは消されるから証拠を手放せと!」
「ーーーー」
「しかし彼女はーー」
杉本は言葉を濁し、それ以上は語らない。が、何となくその先は判った。
「このままでは殺人犯。警官も
乱歩の言葉に杉本はなんの反応も見せない。
諦めている人の顔だ。
「電話した君に議員は証拠隠滅の方法を教え、君はその通りに彼女の胸にもう二発撃ってマフィアの仕業に偽装。発見を遅らせる為、川に遺体を流した」
乱歩の推理に何も応えない杉本に、箕浦が立ち上がった。
「山際が入手したという証拠品は何処だ」
「ーーーー」
「その議員は山際の仇だ!云え杉本!」
机を叩き、隠された証拠品の場所を吐かせようとする箕浦だったが、杉本は矢張り反応を見せない。
「ねぇ、杉本君」
杉本の背後、何時の間に立ち上がったのか、乱歩はそう声をかける。
「彼女の最期の言葉を
「ーーーー」
「『ごめんなさい』」
沈黙。
「……本当に、凡てお見通しなのですね。……証拠は……机の
ーーそうしてこの事件は幕引きを迎えた。
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作者名:女中 | 作成日時:2022年6月11日 11時