三十三話/偶には寄り掛かるのも大事 ページ33
「ーー確かに私は『手の内にある物体とほぼ同等の大きさか物の位置を交換する』異能者です」
太宰の推理にもう誤魔化すことは不可能だと悟ったAは観念してそう云った。
それから少し考え込み、太宰の方を見やると、
「一つ、聞きたいことがあるのですが…」
「よしきた。此の私、太宰に不可能な事等ないのだよ。何でも聞いてくれ給え!!」
先刻迄の緊張感は何処へやら、太宰は目を輝かせてそう
その男の声にAは弾かれたように右側に目をやった。
「ーーーー」
Aの視線の先には小さく寝息を立てている敦。
その気持ちよさそうに眠る少年の姿を確認して安堵しつつ、
「敦君が……起きてしまうので静かにお願いします」
「あぁ、確かにそうだね。君の云う通りだ。御免御免」
最初、無意識に尖ってしまった声を柔らかく修正し、口元で「しー」と人差し指を立てるA。その少女の可愛らしい注意を受け、太宰は明らかに口先だけの謝罪をする。
「それで、聞きたいことって?」
「私が孤児院を追い出された理由なんですけどそれが、よく分からなくて……」
Aの注意通りに声を潜めて先を促す太宰にA
は言葉を続ける。
この際、秘密を共有する仲ーー共犯者として全てぶちまけておいてしまおうと。
この短時間で身をもって思い知らされた太宰の天才的頭脳なら或いは、という期待と羨望を抱き乍ら。
「その時は意識が朦朧としていたので……今から話す記憶が正しいか、確証は無いのですが……」
と、何処か歯切れ悪くあの夜の記憶を語らい始めたのだった。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時