二十四話/大事なものだから ページ24
太宰の宣言通り、虎の姿が白髪の少年。中島敦に変化する。ーー否、戻る、と云った方が正しいかもしれない。
「ーーぁ」
少年は意識が無いのか、そのまま前にいる太宰に倒れ掛かった。それを彼は片手で受け止めて、
「男と抱き合う趣味はない」
一言、そう云い放ち容赦なく敦を突き放した。支えを失った少年は派手な音を立てて硬い床に倒れ込む。視覚的にも聴覚的にも痛そうだ。
「敦君……!」
倒れた敦に心配そうにAが駆け寄る。体を揺すって何度も名前を呼ぶが、少年は一向に起きる気配を見せない。
「太宰さ」
「おい太宰!」
中々起きない敦に心配になり太宰を呼んだA。
その声をある男の声が遮った。
きつそうでよく通る確かに聞き覚えのある声だった。ほんの小一時間前にも同じように声は太宰を呼んでいてーー、
「……国木田、さん?」
「あぁ、遅かったね。虎は
「その小僧……」
太宰の駄洒落を完全無視した国木田が此方に駆け寄ってくる。そんな彼の視線の先には何時の間にか黒髪の少女に膝枕されている敦。
「……じゃあそいつが」
国木田はゆっくりと二人から視線を逸らした。見てはいけないものを見てしまったかのように。
「うん、虎の異能力者だ。変身している間の記憶がなかったんだね」
「全くーー次からは事前に説明しろ。肝が冷えたぞ」
何の悪気も無さそうに云った太宰に国木田は嘆息し、メモを取りだした。
「そのメモ!」
それは食事処で太宰が国木田に手渡したメモだった。
覗き込んでみれば、そこには『十五番街の西倉庫に虎が出る。逃げられぬよう周囲を固めろ』と記されている。
分かっていたなら教えてくれれば良かったのに、とAは太宰を睨み付けた。だが、目の前の美丈夫はそんな少女の視線を気にも留めず、
「美女に膝枕され乍らか細い指で首を締めて貰えたら楽に死ねるのかな…」
そう云って何処か羨ましげに敦を見つめていた。
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女中(プロフ) - よくねたしおだおぉぉぉぉ!!!さん» 米有難うございます励みになります!!!初めてコメントとかきて過呼吸なりました(Tほんとに!!有難うございます!!! (2022年2月7日 9時) (レス) id: 44e9453d1b (このIDを非表示/違反報告)
よくねたしおだおぉぉぉぉ!!! - ウワァ、、好き、、もっと評価されるべき!更新待ってます!!! (2022年2月6日 19時) (レス) @page45 id: a2762c3708 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:女中 | 作成日時:2021年12月4日 16時