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嵐山が一般市民を保護した、その知らせは未来を確定させた。
防衛任務で嵐山と出会う一般人市民。ゲートが開きその人が逃げるならそこで未来は途切れていた。けれど、逃げずに嵐山が保護したなら彼女はここにやって来る。
携帯を取り出して嵐山に電話を掛けた。
「どうした迅、珍しいな」
数コールで出る未来。読み間違えていない。
「嵐山、急にすまん。保護した市民は今木虎がついてるか」
「ああ」
「そうか、ありがとう」
木虎が本部に連れてくる。それまであと数十分。
電話を切って、スマホの時計に目を向ける。心臓が音を立てている。市民を保護したら、記憶封印措置を行う。俺がこれから彼女が連れられて来る部屋に行かなければ、彼女はきっと記憶を無くす。選択肢はひとつしか無かった。
「……迅、」
俺を見つめる彼女が、俺の名前を呼んだ。
朝に見た、記憶の中の彼女より髪が伸びていて、幾分か大人になっていた。
ああ、そういえばこの声だった。
ソファに座る彼女の側へ足を進める。一歩近づく度にどくどくと心臓が音を立てる。
ぎし、とソファがなって目の前の彼女は立ち上がった。彼女はゆっくりと両手を伸ばした。
「迅、」
伸ばされた手を、掴んで体を抱き寄せた。
「おかえり、A」
手放すものか、もう二度と。
夢の中、消えた彼女をかき消すように、腕に力を込めた。抱き寄せた体の熱が生身のAだと自分の脳に伝わってくる。
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鏡 - なぎささん» なぎささんコメントありがとうございます!好きと言って頂けるだけでありがたいのに5回も読み直して頂けるなんて恐縮です…!本当に本当にありがとうございます!嬉しすぎて泣きそうです…不定期更新でご迷惑お掛けしますがこれからも頑張りますね! (2022年10月1日 20時) (レス) @page49 id: 79e67df0bc (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 更新ありがとうございます!この小説が好きすぎて5回は読み直しました...これからも応援しております🥳ご無理のない程度に頑張ってください! (2022年9月30日 20時) (レス) @page48 id: 0fe7f18098 (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - 璃々さん» コメントありがとうございます!手探りで進めているようなお話ですが面白いと言って頂けて本当に嬉しいです!続きも待ってくださるなんて本当に嬉しすぎて転げ回っております…本当に励みになりました!不定期更新で申し訳ないですがこれからも更新頑張りますね! (2022年7月30日 0時) (レス) id: e6b083c4a6 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - コメント失礼します!近界から帰ってくるっていう新しいタイプのお話ですごく面白いです!!!夢主の実力がどのくらいかとかほんとに気になって仕方ないです…続き楽しみに待ってます!頑張ってください!!! (2022年7月29日 19時) (レス) @page31 id: e950c5fcca (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - ゆん。さん» コメントありがとうございます!世界観にハマるだなんてとてもとても嬉しいお言葉ありがとうございます!私もゆん。様のお言葉に励まされ飛び上がって喜んでおります…!これからもちょこちょこ更新しますのでどうぞよろしくお願い致します! (2022年7月15日 12時) (レス) id: d84ec32568 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鏡 | 作成日時:2022年6月30日 2時