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トリオン兵が動かなくなったことを確認して、後ろに立つ彼女の存在へ意識を向けた。

「一般市民が立ち会ってしまった。これから保護する」

彼女に聞こえないように小さな声で本部に連絡を入れる。機密保持のため、彼女は今見た記憶を消されてしまうのだろう。その前に一つだけ確認したかった。

「こいつの名前知ってるんですね」

振り返った先にいる彼女は小さく口を開けて俺を見ていた。

「あ、えっと、テレビ?かな、それで知ったのかも」

俺も嘘をつくのは得意ではないが、彼女の咄嗟の言葉になんて分かりやすい嘘なんだろうと思った。取り繕うような言葉だった。

「嵐山さん!」

会話を遮ったのは駆けつけた木虎の声だった。

「もう片付いてたんですね。市民の方は私が」

木虎はちらりと彼女へ視線を向ける。

「嵐山隊の木虎です。お話があるので本部に来ていただきます」

「え、と本部」

「はい、ご協力お願いします」

本部と口に出した途端、彼女の顔は一瞬固まった。凛とした態度で木虎は話を続けた。

「警戒区域外とはいえ、こんな近くで。しかも区域内に入ろうとしていた様ですね。嵐山さんが居なかったらあなた、死んでいたかもしれませんよ」

「木虎、そこまで言わなくても」

「いえ、注意が必要です。でも、まぁお話は本部で」

行きましょう、そう言って木虎は彼女に視線を配る。どこか目が泳いでいるような彼女に少しの疑問が過ぎった。けれど、トリオン兵と相対した衝撃だろうと自分の中で納得させた。

2人は本部の方へと歩き出した。2人の背中を見つめる。木虎の後に続く彼女の足取りはどこか重いようだった。彼女の手はまたぎゅっと握りしめている。



迅がみた未来はこの未来だったのだろうか。
悪い未来じゃないと言っていたけれど、果たして。それにこれは迅があれほど動揺する未来だったのだろうか。

小さくなる2人の背中を少しの間眺めていた。

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- なぎささん» なぎささんコメントありがとうございます!好きと言って頂けるだけでありがたいのに5回も読み直して頂けるなんて恐縮です…!本当に本当にありがとうございます!嬉しすぎて泣きそうです…不定期更新でご迷惑お掛けしますがこれからも頑張りますね! (2022年10月1日 20時) (レス) @page49 id: 79e67df0bc (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 更新ありがとうございます!この小説が好きすぎて5回は読み直しました...これからも応援しております🥳ご無理のない程度に頑張ってください! (2022年9月30日 20時) (レス) @page48 id: 0fe7f18098 (このIDを非表示/違反報告)
- 璃々さん» コメントありがとうございます!手探りで進めているようなお話ですが面白いと言って頂けて本当に嬉しいです!続きも待ってくださるなんて本当に嬉しすぎて転げ回っております…本当に励みになりました!不定期更新で申し訳ないですがこれからも更新頑張りますね! (2022年7月30日 0時) (レス) id: e6b083c4a6 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - コメント失礼します!近界から帰ってくるっていう新しいタイプのお話ですごく面白いです!!!夢主の実力がどのくらいかとかほんとに気になって仕方ないです…続き楽しみに待ってます!頑張ってください!!! (2022年7月29日 19時) (レス) @page31 id: e950c5fcca (このIDを非表示/違反報告)
- ゆん。さん» コメントありがとうございます!世界観にハマるだなんてとてもとても嬉しいお言葉ありがとうございます!私もゆん。様のお言葉に励まされ飛び上がって喜んでおります…!これからもちょこちょこ更新しますのでどうぞよろしくお願い致します! (2022年7月15日 12時) (レス) id: d84ec32568 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年6月30日 2時

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