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夕飯を食べ終え、各々が好きに過ごす頃。私はリビングを離れた。なんだか今日は疲れてしまった。温かいお湯にでも浸かろうと思い、自室に行き着替えとお風呂道具を持つ。リビングでは桐絵ちゃんの声が響いている。きっと烏丸くんの嘘にまた引っかかたんだろう。容易に想像できるそれにふっと静かに笑って私は部屋を後にした。
ちゃぷ、と水が跳ねる音がする。目線を落とすとゆらゆらとおぼろげな輪郭の自分の足が見えた。膝元に自分の両手を伸ばす。3000点、取ったはいいものの自分の中で膨らんでいる戸惑いに目を背けたかった。はたから見れば、ヒュースの言ったように私の動きは鈍くはないんだろう。でもその動きこそが自分が自分でなくなるような、そんな気がしてくるのだ。お湯の中で伸ばした両手を握る。ふと嵐山君の言葉を思い出した。
『無理しないでくださいね。迅や俺がいますから』
彼の優しさはこのお湯みたいに温かいものだった。静かに肩口までお湯につかる。全身をつつむ温度が体の余分な力を吸い取っていく。
「迅には何か見えてるのかな……」
私が笑っている未来が見える、迅はそう言っていた。まるで占い師のように、今はその力が羨ましいと少しだけ思う。この戸惑いがなくなるのか、はたまた大きく成長してしまうのか知っているのは未来だけだ。
水面が静かに揺れる。表面から徐々に芯まで温かくなっていく感覚。そういえば今日はまだ迅に会っていない。どこかで暗躍でもしているんだろうか。
――私は迅と一緒に生きるよ
そういった私の言葉に間違いはない。迅とともに生きる、その為に私はボーダーに居る。
『Aは、何のためにボーダーにいる』
帰ってきてからずっと頭の片隅にある言葉。そしてその時に頭をよぎった誰かの言葉。
『もう嫌だよ……、もう』
あの時「逃げなさい」と言った誰かの言葉と、もう一つ。この声は一体。
天井を見上げる。湯気でぼやけた視界は私の世界のようだ。何か、霞がかったような。そして私は一度目を閉じた。つきん、とまたわずかにこめかみが痛む。
ゆっくりと目を開ける。世界はまだ霞がかっている。小さく息を吐いて体を起こした。水の抵抗がいつもに増して感じられる気がして、のぼせてしまったのだと自分に言い聞かせるように私は浴槽に手をかける。そうして徐々に冷め行くお湯から抜け出した。
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鏡 - なぎささん» なぎささんコメントありがとうございます！好きと言って頂けるだけでありがたいのに5回も読み直して頂けるなんて恐縮です…！本当に本当にありがとうございます！嬉しすぎて泣きそうです…不定期更新でご迷惑お掛けしますがこれからも頑張りますね！ (2022年10月1日 20時) (
レス) @page49 id: 79e67df0bc (このIDを非表示/違反報告)
なぎさ(プロフ) - 更新ありがとうございます！この小説が好きすぎて5回は読み直しました...これからも応援しております🥳ご無理のない程度に頑張ってください！ (2022年9月30日 20時) (レス) @page48 id: 0fe7f18098 (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - 璃々さん» コメントありがとうございます！手探りで進めているようなお話ですが面白いと言って頂けて本当に嬉しいです！続きも待ってくださるなんて本当に嬉しすぎて転げ回っております…本当に励みになりました！不定期更新で申し訳ないですがこれからも更新頑張りますね！ (2022年7月30日 0時) (レス) id: e6b083c4a6 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - コメント失礼します！近界から帰ってくるっていう新しいタイプのお話ですごく面白いです！！！夢主の実力がどのくらいかとかほんとに気になって仕方ないです…続き楽しみに待ってます！頑張ってください!!! (2022年7月29日 19時) (レス) @page31 id: e950c5fcca (このIDを非表示/違反報告)
鏡 - ゆん。さん» コメントありがとうございます！世界観にハマるだなんてとてもとても嬉しいお言葉ありがとうございます！私もゆん。様のお言葉に励まされ飛び上がって喜んでおります…！これからもちょこちょこ更新しますのでどうぞよろしくお願い致します！ (2022年7月15日 12時) (レス) id: d84ec32568 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鏡 | 作成日時：2022年6月30日 2時
