*20 ページ20
期末試験は無事に終えることができた。
単位を落とすこともなく、夏休み前の最後の講義も終えた私は晴れやかな気分で電車に乗り込む。
YG少し遅くなるけど、今日は帰れるから
お昼頃にユンギ先生から届いたメッセージを見返しながら、自然と頬が緩んでいく。
タイミングのいいことに、先生も今日からは通常通りの勤務時間に戻るみたい。
それに明日は久しぶりに休みだからどこかへ出かけようって、昨日の夜電話で言ってくれたし。
明日はどうやって過ごそうかな。
話したいことも、行きたいところもたくさん溜まっている。
考えただけで胸が弾んで、スーパーで夕食の食材を買い込んだあと、家までの道を鼻歌を歌いながら帰った。
家に帰りついたのは日が暮れかかった頃だった。
「ただいま〜」
しんと静まり返った部屋に独りごちて、靴を脱ぎながらこの後の予定を頭の中で順序立てていく。
先生が帰ってくるまではまだ時間があるから、先にお風呂に入って、それから夕食の準備に取りかかれば丁度いいだろうか。
それに余裕があれば、最近ちゃんとできていなかった掃除もしておこうかな。
そう意気込んで、私は勢いよく立ち上がる。
けれどその瞬間、さっと血の気が引いていく感覚がして、目の前が真っ暗になった。
「っ…あれ…?」
体に力が入らなくて、その場に崩れ落ちるようにして蹲る。
目を開けようとすると、視界がゆらゆらと揺れて気持ちが悪い。
一体どうしてしまったんだろう。
わずかに不安がよぎったけれど、目を覆ってじっとしているとすぐに目眩は治まった。
このところ睡眠不足だったし、私も少し疲れているのかな。
体調が悪い訳ではないし、今日は早めに休めばきっと大丈夫。
そう思った私はあまり深く考えずに、買ってきた食材を冷蔵庫にしまうためにキッチンへと向かった。
596人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yuzu | 作成日時:2022年6月5日 21時