少女の瞳に映る世界は【ワールドトリガー】

第35話 オリ主side ページ39

｢うーん、なんて説明しようか…｣


頭をひとしきり掻いた後林藤さんは言った。

｢お前の親父さんが亡くなった時の話なんだが、｣


｢父さんが死んだ時の…？｣


｢迅が見殺しにしたと思ってるんだろ？｣


まあそう思ってるのも仕方ないけどな、と笑う。


｢どういうことですか…？だって見殺しにさせたっていうのは迅本人も認めたことですよ？｣

｢ああ、あれはただ庇ってるだけなんだ。Aの親父さんをな。｣


庇った？
庇う理由などどこにあったか。


｢迅は見殺しにしたんじゃなくて見殺しにさせられたんだよ。｣


｢させられた？｣


誰かに頼まれて見殺しにしたということになる。


｢話していいことなのか分からないけど、いつまでも言わないのも悪いからな。

…迅はAの親父さんに頼まれて見殺しにしたんだよ。迅だって泣いて拒否してた。でもそうせざるを得なくなった。｣



｢父さんが…自ら…？｣

｢迅のSEで親父さんが死ぬ可能性は高かった。他の皆も死ぬ未来はあり、親父さんが皆から離れて死ねば皆は死ぬ可能性がなくなる。そんな感じの未来だったらしい。親父さんはそれを受け入れたんだ。命と引き換えに皆を守るってな。｣


｢……｣


信じられない告白に言葉が出てこない。

だって、あいつは自分が見殺しにしたって言っていたじゃないか。


｢迅はAの風香に親父さんに対するイメージを悪くして欲しくなかったんだろ。代わりに自分がそうなるようにしたんだ。…迅なりの考えだ。｣


私は思わず立ち上がった。

｢迅に会ってきます。｣


そっちにはいないかもなーという声も半分聞こえず、私はラウンジを抜け出した。

第36話 オリ主side→←第34話 オリ主side

ラッキー隊員

加古望

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す