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｢嘘じゃん｣
｢嘘じゃねぇよ｣
ぐい、と腕が引っ張られてバランスを崩す
｢わ、！？｣
｢ほら、どくどく言ってんだろ｣
ドッドッドッ…規則正しくも早い心臓の音が耳にダイレクトに飛び込んできた
それもそのはず
私は、轟の胸に耳を押してるような形の体制で、轟に寄りかかっているからだ
腕を引っ張られてバランスを崩したかと思えば轟がそのままこの体制になるまで私を引っ張ったのだ
｢Aの心臓の音か？これ
……2人合わさるとすげぇうるせぇな｣
｢と、轟のせいでしょ……！｣
そっ、と私の背中に手のひらを回した轟にこの照れて焦っている感情が全て見透かされている気がして思わず語気を荒げてしまう
｢？俺か？ていうか焦凍って呼んでくれねぇのか？｣
｢わ、わかったから、少し離して……っ！｣
｢なんで、｣
｢なんでって！？…照れるから？！｣
ばっ！と顔を上げると轟の綺麗に整った顔面が眼前に現れてまたもや咄嗟に顔を下げる
きっと轟から見たらただの変人だろう
｢俺も照れてる｣
｢！？そんな冷静な顔してる癖に…！？｣
｢本当だ。心臓の音聞こえてんだろ
声震えねぇようにするので精一杯だ｣
｢うそだ…｣
｢本当だ｣
だって、と轟は言う
｢彼女とか初めてだし、女子とこんなに距離縮めたのも人生で初めてなんだ
でも、距離感近めたりした方が恋人っぽいってA言ってただろ？慣れとかねぇと…な、？｣
｢や、ま、っ……｣
ぐいっと腰に回った手の力が強くなる
確かにそういった記憶はある
けれど急にこんなふうにされたら混乱するし、こんなイケメンがこんな近くにいたらどうすればいいのか分からない
｢飛ばしすぎだよっ……！こんな……照れるにきまってるじゃん、まってよ……追いつかない、から……！｣
轟の畳と柔軟剤の混ざった匂いが鼻に飛び込んできてくらくらする気がする
｢……わかった、わりぃ｣
ぱっと手が離されて轟との空間が空いた
｢……嫌だったか？｣
首を少し傾けて私を恐る恐ると言った形で轟は覗いてきた
その整った顔立ちと甘い声にどくん、と胸が高なった
｢……いやじゃないよ、驚いただけだもん｣
｢！ほんとか？｣
嬉しそうな轟に頷いて続ける
｢私も焦凍くんの彼女としてこれから頑張るから、少し待ってて欲しい……かな、？
だから焦凍くん、やりすぎは良くないけど…今みたいにして早く慣れさせてほしいな｣
｢！おう、｣
轟が優しく笑う顔にまたもや心臓がなる
…これから毎日心臓バクバクな生活が始まりそうだなぁ
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作者名：月亜 | 作成日時：2022年10月30日 20時
